昼時のケンタッキーにて
今日は朝から近所の図書館に行き、かなり乱暴な本の選択作業をする。
自分のしている仕事の精度の低さにげんなりしつつ、
やるしかないのだと自分に言い聞かせ、
それでもなんとか精度をあげられないものかと、
知っている限りの最高の助っ人に応援を頼んだ。
仕事が山積みなので午後いちには会社に着かなくてはならず、
でも朝からなにも食べていなかったので、とりあえずケンタッキーに入った。
そこで、ちょっとショックな出来事があった。
わたしの席の隣のブースに、フィリピン系だと思うが外国人の母親と、
小学校1年生くらいの女の子が座っていた。
母親は携帯電話を片手に、かなり大きな声で、わたしにはわからない言語で話している。
女の子は退屈なのだろう、いすの上に立ち上がって、レジや厨房のほうをのぞきこんだり、
いすの上で体操のようなことをしたりしている。
おどろいたことに、女の子は汚れた靴のまま、いすの上に立ち上がったり、
いすの上で足踏みをしたりしていたので、
わたしは軽い気持ちで、その女の子に、
「いすの上に立つんなら、靴をぬごうね」と声をかけた。
女の子ははにかんだような顔で、「はい」と素直に言っていすに座った。
……と、そのとき、電話をしていた母親が、
「あんた、ばか」とわたしに言ったのだ。
「うるさいよ、あんた関係ないね、ばか!」
母親の罵倒は続いた。
ひゃあ、と思ったけれど、まあ、それだけなら、
注意した相手が悪かったな、というくらいのものだ。
おどろいたというか、胸が痛くなったのは、
母親が罵倒を始めると、女の子が両手で自分の耳をふさいで、母親から顔をそむけたのだ。
そして、母親が、
「あんたうるさいんだよ、自分の子どもじゃないんだから、関係ない」
と怒鳴りながら席をたとうとすると、
女の子はわたしのほうをじっと見て、ごめんなさい、というふうな身ぶりをした。
小学校1年生くらいの子なのに、そのしぐさはとても大人っぽくて、
ああ、この子はずっとこんなふうにして暮らしているんだな、と思った。
だいじょうぶだよ、というふうにうなずいて、にっこりしてあげたら、
女の子はほっとしたように笑顔になって、ブリブリ怒っている母親に連れられて店を出ていった。
店の自動ドアがしまった後も、女の子はすまなそうにわたしのほうを見ていたから、
わたしは笑顔で小さく「バイバイ」と手をふった。
女の子は母親に気づかれないくらい小さく、手をふりかえして去っていった。
あの子はこれから、どんなふうに生きていくのかなあ。
わたしは余計なことをしてしまったのかなあ。
会社に着くと、感慨にふける暇もなく、ぶわわわわあ、と雑務がおしよせる。
驚くほど速く時間は過ぎて、気づくともう、残業の時間帯。
今日も10時過ぎまで残業して帰宅。つかれた。
でも、いいことも、ないわけではない。
今ちょうど、仕事でお願いした挿絵やイラストの原画が完成してくる時期で、
これがもう、想像していた以上に、いいんだな。
わたしは絵心がなく美術館などにあまりいかないので、
原画の迫力というのに触れた経験が少ない。
それだけに、厳重な包みの中から出てくる原画をはじめてみるときの喜びたるや、
うーん、それまでのイライラが吹き飛ぶ、とまではいかないまでも、
かなり明るく、未来がひらけたような気持ちになるのは間違いないのだった。
さて、明日も大好きな画家さんの原画が仕上がってくる予定だから、
それをたのしみに、なんとか乗り切るぞー。おー。