プロの仕事
昨日、病院のベッドの中で『翻訳万華鏡』読了。
- 作者: 池央耿
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/12/13
- メディア: 単行本
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でも、翻訳学校の校長の言葉は、後半もやっぱり正しくて、がんばってついていって、結局翻訳家にはならなかったけど、この本に書かれている「翻訳とは何か」ということが、100%ではないかもしれないけれど、かなりの部分理解できる編集者・読者になった。編集者としていろいろな著者の文章を読んでいるが、時々池先生に言われた「美文・麗文は不要です」という言葉がよみがえり、そうだよなあ、と苦笑したりする。興に乗って書いている本人は、自分の文章が自己陶酔に陥っていることに案外気づかないものなんだよね。(この点をそれとなく指摘すると怒りだす人とすぐに気づいて直してくる人とはっきり二手に分かれます。長くつきあえる著者とそうでない著者との分かれ目、という気もします。)
池先生から教えられたのは、「プロの仕事とは何か」ということだったのかもしれない。3年間翻訳学校に通って、少しずつお仕事ももらって、ちょっと調子に乗っていたわたしに、「ちょっとうまいアマチュア」と「プロの文筆家」の間にある高い壁を見せてくれたとも言える。『翻訳万華鏡』という本に話を戻すと、この本を読めば、池先生の弟子でなくても、また、翻訳家志望者でなくても、「プロの仕事とは何か」ということが読み取れるんじゃないかと思う。(もちろん、いわゆるハウツー的な書き方はしていないので、ある程度の読解力がないと無理だとは思うけど。)
今日で入院6日目。明日退院の予定だ。人生初の入院というのをしてみて思ったのは、医療従事者ってすごいな、ってことだ。お医者様も看護婦さんもヘルパーさんも、ほんとうにみんな休みなくてきぱきと働き続けている。この6日間、この病院で働いている人に対して、嫌だな、と思う瞬間はまったくなかった。過剰なサービスをするわけではないが、全員が役割をわきまえ、医師は医師らしく、看護婦は看護婦らしく、まさに「プロの仕事」を提供している、という感じだ。病室は常に清潔、毎回温かく美味しい食事が供される。まあ、当たり前といえば当たり前なんだろうけど、当たり前のことをきちんとやり続けるのって、それなりに大変なんだよね。