『永遠の0』読了

前回のブログに書いた「気楽に読めそうな本」、予想どおり(結構分厚かったけど)すらすらと読めて、
昨夜のうちに読了。おもしろかった。

永遠の0 (講談社文庫)

永遠の0 (講談社文庫)

最後にちょっとしたどんでん返しがあるけれど、なんとなく予想がついていたし、
太平洋戦争のことを調査する現代の若者である姉弟の存在は、ちょっとありきたりかな。
とくに姉のほうの恋愛話は、30代独身女性の心理をずいぶんステレオタイプで描いている、という印象。
でも、そういったもろもろをすべてぶっ飛ばしてしまうのが、
「ディテール」の凄みなのだった。


作品の大部分が、姉弟の聞き取り調査という形をとった、戦争体験者の語りで占められている。
その誰もが、たとえば戦闘機の飛び方だの、エンジンの仕組みだの、戦場の地形だの、
もう、とにかく固有名詞満載で、ものすごく細かく描写するのだ。
戦争体験者たちはそれぞれに異なる経験を持っていて、当然ながら戦争観や人生観、戦後歩んできた人生も全然違う。
その描き分けも実にみごとで、なんていうか、作品上の役割分担がきっちりなされている感じ。
もちろんわたしは、戦闘機の飛び方だのエンジンの仕組みだの、そういったことにまったく関心がない。
零戦がどれほど素晴らしい戦闘機だったか、しかしどういうところに弱点があったのか、
まあ、普通はわたしにとってはそんなこと、どうでもいいのよ、どうでも。
でも、この作品を読んでいると、このディテールの部分を、多少煩わしいと思いながらも、読まずにはいられない。
それはたぶん、語り手である戦争体験者の「熱っぽさ」みたいなものが、
聞き手の若者を通してなのか、作者を通してなのか、よくわかんないけど、確実にわたしのところまで伝わってくるからだ。
この凄みのあるディテールがあってこそ、
やや教条的というか、お涙頂戴的ともいえるような、まっすぐなストーリー展開が生きてくる。


残業して帰宅してへとへとだったはずなのに、
結局夢中になって読んでしまい、午前4時ごろに読了した。
ひさしぶりのわくわく本であったことは間違いない。


今年も会社はあと2日。
気づいたら今月、会社とクミアイで取り決めている超過勤務時間の上限を超えてしまい、
上司からチェックが入った。
なので、明日あさっては、短時間勤務にして時間調整をしなくてはならない。
やらなくちゃいけないことは結構あるのに、やれやれ、だ。
でも、今年の年末年始は、カレンダーどおり休めそうで嬉しい。
年末に2泊3日で花巻温泉に行く予定なので、どの本を持っていこうかと、考えるだけで楽しくなってくる。
小林章夫訳の古典新訳文庫版『フランケンシュタイン』を読もうかなあ。
メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』には、特別な思い入れがある。
実は翻訳家としてのデビュー作が、子供向けの絵本ではあるが、この『フランケンシュタイン』だったのだ。
もちろん、当時出ていた二種類の翻訳(東京創元文庫と角川文庫)も既読。
いやあ、これがなかなか深い話なんだよねー。
もし、映画しかみてないとか、フランケンシュタインって怪物の名前だと思ってた、とかいう方がいたら、
ぜひ、翻訳を読んでみてほしい。小説としての面白さは抜群!であるうえに、立派に「ブンガク」しているから。
おーし、花巻温泉では、『フランケンシュタイン』『ガラスの鍵』『花のノートルダム』と、古典新訳文庫3連発といくか。
(間違っても「宮澤賢治三昧」なんていう悪趣味なことはしないのだ!)