文学論争、伝統芸能、ヤクザ映画、シンドラー

ここのところ仕事面では心労が多く、
読書も思うようにはかどらなかった。
そんな中、自宅リビングのテーブルの上にあったこの本をぱらぱらと読み、
「あ、これはわたしが読まなくちゃいけない本だ」と思って読み始め、読了。

現代文学論争 (筑摩選書)

現代文学論争 (筑摩選書)

とてもおもしろかった。
わたしは時々このブログでも書いているように、「議論」というのがとても苦手で、
できれば言い争いなどすることなく、平穏に物事が決まっていってほしいと願っている。
でも「ひとごと」となれば話は別で、ましていまやほとんど歴史上の人物となっている大作家たちの「論争」は、
作家たちの人間臭さがよく表れていておもしろい。
ものすごく細かいところまで調べてあって、膨大な情報量。
おそらく学問的にもちゃんとしているのだろうが、
わたしはただひたすら、ゴシップとして、ミーハー的な興味から、
へえ、とか、ふふ、とか思いながら読み進めた。


最後まで読んで、実は少し、どんよりした気持ちになった。
それは、論争をいっぱい聞かされて食傷気味になった、ということではない。
この本は1960年代から2000年代へ、だんだん時代をさかのぼってくるようにして17の論争を並べているのだけれど、
なんだかんだ言っても、60年代、70年代はまだ、「文学論争」なんてものに人々が注目していたような感じがする。
論争のぶち上げ方も、発表の場も、目立つというか、派手。
それが最近は、新聞・雑誌もほとんどとりあげないし、ごく一部の「内輪もめ」っぽい感じの論争が多くて、
なんていうか、さびれてる感じだ。
このまま文学の話ってどんどんマイナーになっていって、
「小説を読むのが好き」だなんて言うと、「変な人」って思われてしまうのかもしれないなー、なんて思ってしまったのだ。いや、すでに世の中はもうそうなっているのかもしれないけど。
(自分の周囲には文学好きや小説好きが多くいるので、錯覚をしているのかもしれない。)
ちなみに、この本でとりあげられている「宮澤賢治殺人事件」という本は、
以前、そんな論争があったことなど何も知らずに、おもしろく読んだ。
で、このブログで結構くわしい(内容的にはいつものようにへらへらしたものだが)感想を書いている。
「こころ」だとか「たけくらべ」だとか、論争でとりあげられている作品は、
多くがわたしの日々の仕事と直結しているもので、
時期によっては朝から晩まで、宮沢賢治夏目漱石のことを考えて悶々としている身としては、
リビングのテーブルで偶然見つけるのではなく、自分で購入して読むべき本だった、と反省している。


今日は午後、能楽堂狂言鑑賞。
着物で行くつもりだったのだけれどお天気がいまいちだったので洋服に変更。
とてもおもしろかった。
能は必ず眠くなるし、文楽も時々眠くなるんだけど、狂言はいつもだいたい、ちゃんと起きていられる。
ストーリーがわかりやすいし、動作もコミカル。ひとつひとつの演目がわりと短いから飽きない。
今回は最後の演目「鈍太郎」がいちばんおもしろかった。万之介さんの少しとぼけた、お茶目な感じがなんとも言えずいい。
足の動きがかわいい。最後のリフレインがわたしが思っているより少し長くて、それが効果的なんだな。
文楽を見ていても時々感じるのだけれど、リフレインや「間」のとりかたなどが、
こちらが「これくらいかな」と思っているより、気持ち、長くて、
それがちょっとだけイライラっとするんだけど、その分、重厚感が出て、
作品を「十分堪能したぞ」という満足感(満腹感?)を醸し出すような気がする。


懐かしい人たちと喫茶店Rでお茶をして帰宅。
同居人が料亭風の献立を考えて買い物をしてくれていたので、
早速、二人で調理にかかった。
里芋の炊き込みご飯、金目鯛の煮付け、なすの蒸し物、おかひじきのおひたし、松茸のどびん蒸し。
「もやさま」を見ながら夕食を終え、
明日の仕事のことを考えて「どんより」、という魔の時間帯をやり過ごすため、
JCOMオンデマンドで105円のヤクザ映画を購入。
菅原文太主演の「山口組外伝 九州進攻作戦」ってやつ。
すごくおもしろい、ってわけではないが、日曜の夜をだらだら過ごすにはぴったりの選択だった。
ヤクザ映画ではやっぱり、菅原文太松方弘樹がかっこいい。
30年くらい前に、うちの叔母が菅原文太が好きだと言っていて、「えー、なんで?」と思ったのだが、
今ならわかる。


映画をみおわってから、NHKで「シンドラーユダヤ人」という番組をやっているのに気づき、
最後まで観た。
シンドラーって人は、いわゆる「立派な人」「人格者」だったわけじゃないんだな、ということがわかっておもしろかった。女好きであちこちに愛人がいたし、しょっちゅう人にお金の無心をしている。
でもこういう、ゆるいキャラクターだったからこそ、
他のだれにもできなかったこと――1200人のユダヤ人の命を救う、なんてことが、できたんじゃないだろうか。
インタビューのとりかた、映像の見せ方や構成など、なかなかよくできたドキュメンタリーだと思った。


さて、もう寝なくちゃいけないのだが、今日、喫茶店Rでお茶をしたときに、
ええー!?と思うようなことがあったので、ちょっと書いておこう。
わたしたちは6人で店に入り、それぞれに飲み物や軽食を頼んだ。
混雑していたせいか、入店後45分ほど経っても品物が来ない。
その後の予定があったひとりが注文をキャンセルすることになり、
店員さんにその旨を伝えたところ、店員さんは言った。
「最初のご注文のときにサンドイッチは25分から30分くらいかかるとお伝えしたと思うんですけど、
それ、聞いてないかんじですかあ〜?」
かなり、びっくりした。
そのほかにも、飲み物の注文が全然違っていたり、品切れによる注文変更を注文してから20分経ってから言ってきたり、というどたばたぶりで、「コントみたいだね」と笑っていたのだが、
上記のセリフは、まさにコントそのもの。
わたしは小声で、「ええ、聞いてないかんじです」と言ったのだけれど、残念ながら相手には聞こえなかったようだ。


「心変わり」は電車の中などで少しずつ読んでいる。
ふとんの中で読み始めると、あっという間に睡魔におそわれる。格好の睡眠薬だ。
仕事のことをくよくよ考えると眠れなくなりそうなので、
今夜は「心変わり」を持ってふとんに入ることにしよう。