エンタテインメント読書三昧
先週は、ふと思い立って売れ筋文庫本を3作5冊を一気読み。
- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2009/11/06
- メディア: 文庫
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- 作者: 吉田修一
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星々の舟 Voyage Through Stars (文春文庫)
- 作者: 村山由佳
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/01/10
- メディア: 文庫
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- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/11/28
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- 作者: 桐野夏生
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/11/28
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上記、読了順。
とくに意識したわけではなかったのだけれど、
どれもごく普通の人々が、家族や友人、恋人などと、ふれあったりすれ違ったりしていく中で起きた(起こした)大小さまざまな事件を描いているという点、人間の孤独や弱さを描いているという点で共通している。
「悪人」はさすがに話題作だけあって、読ませる。
登場人物が多すぎて、ちょっとくたびれるのだけれど、
この脇役たちの人物造型や、携帯サイトなどの小道具の使い方がうまい。
ただ、「告白」と同じように、登場人物のだれにも、わたしは感情移入できなかった。だからだめ、ということではなく、のめりこめなかったけど面白く読めた、ということだ。
よくできた海外ミステリを読んでいるような距離感、というところか。
妻夫木くんも深津絵里も好きだし、今月号の「文學界」に出ていた監督さんのインタビューを読んだので、
映画のほうもぜひ観てみたい。
「星々の舟」も、全体としてはありふれた連作短篇なんだけど、
ところどころ、ほー、と思わせる。
たとえば、4年ごしの不倫を続けている女が、
恋人の男にオペラに誘われてドレスを新調するのだが、
待ち合わせの時間に男が現れないので電話すると、
「忘れてた」と言われてしまう場面。
「わかった、じゃあいいよ」とものわかりのいい女を演じた後で、
泣きながらドレスを脱ぐのだけれど、
このときに、「意地でも皺にならないように」気をつけて脱ぐのだ。
うう、この感じ、わかるなー。
わたしはこの本が「初・村山由佳」なんだけど(たぶん)、
この連作短篇の中では、この不倫女の話がいちばんよく書けていると思った。
ほかに兄妹の禁断の恋や、戦争中の朝鮮人慰安婦の話など、
だいぶ話の幅は広がっているのだけれど、
んー、なんていうか、やっぱり30代の不倫女の気持ち、っていうくらいが、
この著者はいちばん描きやすいんだろうなー、伸び伸び書いているなー、という感じがした。
で、上記3作の中で、わたしがいちばんおもしろく読んだのは、やっぱり桐野夏生だった。
あらすじだけ読むと、ふーん、って感じなので、わたしもこれまで手に取らなかったのだけれど、いやあ、やっぱりさすがだ。
主人公の子どもたちの薄情ぶりは、やや現実離れしているような気がするものの、
主人公の59歳の女性と、高校の同級生である友人たちの描き方は、ほんとにこの人は、中年女を描くことにかけては天才だ、と思ってしまう。
夫が急死してから、夫に10年来の愛人がいたことを知るって設定って、かわいそうすぎ。でも、ありそう。世の中にはそんな話、実はいっぱいころがっていそう。
この小説は主人公の女性を中心にいろいろな方向に広がっていくのだけれど、それでもメインのストーリーは、夫の愛人である同世代の女性との、いろいろな意味での「対決」だろう。
夫の愛人が自分と同世代の女性だったことを知ったときの驚き。
うーん、これは落ち込むだろうなあ。
どうせなら若いぴちぴちした女の子であってほしい。それならあきらめもつくし、正妻として相手を「見下して」やることもできる。
夫がこの世にいない今となっては、愛人といがみあっても無意味だとわかっていながら、
クライマックスでは愛人の家の一輪挿しを床にたたきつけて割ってしまう。
愛人は妻の背中にめがけて、男が使っていた歯ブラシを投げつける。
「そんな芝居がかったこと、普通しないでしょ」とあきれた方、女ってものをわかってません。
こういうとき、なぜか女性は芝居がかった言動をとるものらしい。
夫の眼前で愛人の頬を平手打ちした女性をひとり、
愛人に向かって、「このドロボー猫!」と言った女性をひとり、わたしは知っている。
(どちらも、わたし自身ではない。念のため。)
この作者のうまいところは、たとえば上記の歯ブラシの場面で、
投げつけられた歯ブラシを自宅に持ち帰った妻が、
歯ブラシの曲がり具合のカーブを見て、「間違いなく夫のものだ」と確信する、というシーンまで描いているということ。
うう、ぞくっとするくらいうまい。
最近映画化された「東京島」はいまいちだったけど、
そのほかの作品はみんな、どれも「当たり」。相性がいいみたいだ。
ちなみに先週末は、土曜日に静岡に日帰り出張で、日曜日は着物でお出かけ、の予定だったのだけれど、
日曜日の朝、目が覚めたらひどいめまいにおそわれ、結局、お出かけは見送り。
同居人が薬局があくのを待って薬を買ってきてくれて、午後2時ごろまで寝ていた。
以後はめまいもおさまり、読書したり、夕食の買い物に行ったりとのんびりすごした。
月曜日の朝も具合悪かったらどうしよう、大事な会議が3つもあるのに、と思っていたのだけれど、幸か不幸か、今朝はすっきりと目覚め、ばりばりと残業までして帰宅。うーん、どうしていつも休みの日にばかり具合が悪くなるの?
……とはいえ、めまいってのは結構こわいので、今週は少しおとなしくして、なるべく早く帰宅するようにこころがけようっと。
来週は20日、23日、26日と会議で休日出勤&24日25日は社員旅行、という、超ハードスケジュールなので、体力を蓄えないといけないしね。