古典新訳文庫『武器よさらば』
- 作者: アーネストヘミングウェイ,Ernest Hemingway,金原瑞人
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/08/01
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やはり、ヘミングウェイは苦手だ。
金原さんはあとがきで、フォークナーやスタインベックの名前を並べたあと、
「最初にあげた十数名のアメリカ現代作家のうち、
ヘミングウェイほど人の心をうつ作品を多く書いた人はいないと思う。
人間の深い部分に触れてくるからだろう。」
と書いている。「文学的であろうが通俗的であろうが、文句なくおもしろい」とも。
金原さんはきっと、ヘミングウェイがほんとうに好きなのだろう。
というか、ある程度作者や作品に惚れ込まないと、
翻訳なんて面倒な作業をやってみようという気にならないと思うけれど。
たしかに、ラストの一段落などは、かっこいいな、と思う。
しかし、ふたりを追い出してドアを閉めて電気を消したものの、何が変わるわけでもなかった。
銅像にさようならをいうようなものだ。しばらくして、部屋を出た。病院を後にすると、ホテルまで歩いてもどった。
雨が降っていた。(下巻・291ページ)
でも、とくに上巻の主人公のカップルの浅はかな会話が(翻訳でももちろん浅はかな感じをねらっているのだろうけれど)、
うーん、ちょっと受け入れがたいというか、笑ってしまう。
たとえば、こんな会話。
「雨の中を歩くのは好きよ。でも、雨って、恋人には冷たいの」
「いつでも、きみのことは大好きだよ」
「わたしも大好き。雨のなかでも、雪のなかでも、雹のなかでもーーあと、何がある?」
「さあなあ。そろそろ眠くなってきた」
「じゃ、寝てちょうだい。わたしはどんな天気でもあなたが好きよ」
「本当は、雨なんかこわくないんだろう?」
「あなたといっしょなら」
「なんでこわいんだ?」
「わからない」
「いってごらん」
「いわせないで」
「いって」
「いや」
「いって」(……以下、このような会話がもう少し続く。上巻・214〜215ページ)
こういう会話を読んで、なんだこりゃ、と思ったり、冷笑したりしてしまうのは、
わたしが若くみずみずしい恋心を失って、疲れてけがれた大人になってしまった、ってことなんだろうか。
でも、若いとき読んでもやっぱりちょっと……と思ったような気がする。
ヘミングウェイは苦手だ、ということを再確認したところで、とりあえずおしまい。
どなたか、こんなふうに読めばヘミングウェイが好きになれる、っていうコツを知っている方、教えてください。
さて、今日は久しぶりに会議もないのに休日出勤。
ヘルプで入っているほうの仕事で結局8時近くまで作業。
帰宅途中、吉祥寺エキナカの書店で、江國香織さんの本を数冊購入(30パーセントくらい仕事がらみ)。
江國さんは同い年ということもあり、デビューのころから読み続けている。
冊数にするとかなりあるので、「ほとんど」読んだくらいのつもりになっていたけれど、
実は未読の本がずいぶんあったようだ。
吉祥寺ロンロンの地下に新しくできたカレー屋さんに行って、
ベーコンエッググリーンカレー、というのを食べながら、江國香織『がらくた』を読み始める。
久しぶりの軽い読書。悪くない。