速水健朗『タイアップの歌謡史』

タイアップの歌謡史 (新書y)

タイアップの歌謡史 (新書y)

読了。
現在、読書中の古典新訳文庫が、ミル『自由論』なので、ちょっと(かなり)読書ペースが落ちている。
ちょっと気分転換、ということで、手軽に読めそうなこの本を読み始めた。


とにかくものすごい情報量で、どのページも固有名詞であふれている。
1章から3章あたりまでは、知らない固有名詞だらけで、「ふーん」という感じ。
どちらかというと、お勉強モードで読む。
4章、5章あたりから、だいぶ様子が変わってくる。
と、これはあくまで「私」という読者の問題。著者のスタイルは変わらない。
ものすごい量の情報と固有名詞を、読者の「ツボ」をねらって出してくる。
6章〜8章あたりになると、知らない固有名詞はほとんどない。
そうだそうだと自分自身の思い出と重ね合わせながら、
例によって(おもしろい本を読むときはいつもそうなるように)本と話をしながら読み進めることになる。
たとえば1980年代に大ヒットしたリゾートソング、杉山清貴&オメガトライブふたりの夏物語」誕生のエピソード。
かなり「裏話」的な情報が掲載されていて、「へえ〜」と思いながら、
こういうキャンペーンにのって旅行やグルメにあけくれた、二十代前半の自分の生活を思い出したり。
「だとすると、あれはどうなのかな?」などと、派生してくる疑問などもあって、
まだまだ、こういう世界は奥が深そうだ。



それにしてもこの情報収集のすごさは、やはり「インターネットの時代」の賜物なのだろうなあ。
この本を読んでいて、だれかに似ているなあーと思っていて(どうも私はこんなことばかり考えているようだ)、
思い出した。ジャンルは違うのだけれど、文芸評論家の風間賢二さん。
この方の書く本も、まさに機関銃のようにこれでもかこれでもかと情報を放出し、
そのエネルギーのすごさに圧倒される。
何度かお会いしたことがあるのだが、いつも「ええっ、これを読んでいないの?」
「そんなことも知らないの?」と叱られてばかりで、
そのたびに、「風間さんみたいにディープな情報を持っているほうが変!なのですう」と心の中でつぶやいている。


ちなみに、この『タイアップの歌謡史』を読んでみようと思った理由のひとつに、
舌津智之さんの『どうにもとまらない歌謡曲』という本を以前に読んで、
とても面白かったから、ということがある。
そんな自覚はまったくなかったけれど、実は自分は歌謡曲とともに生きてきたんだなあと、実感。

どうにもとまらない歌謡曲?七〇年代のジェンダー

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