古典新訳文庫『ドリアン・グレイの肖像』

ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)

ドリアン・グレイの肖像 (光文社古典新訳文庫)

読了。
期待以上におもしろかった。華麗な文体がどうのとか、芸術観がどうのとか、
そういう難しい話は抜きにして、
昔はやった「ジェットコースター・ドラマ」をみているみたいに、
ただもう、ストーリー展開に夢中になってしまった。
最初はちょっとかったるくて、主人公たちの会話があまりに胡散臭くて、
思わず笑ってしまったりするほどだったのだけれど、
途中から完全にストーリーに入り込み、ドキドキハラハラ、
あやうく電車を乗り過ごすところだった。


中学生くらいの頃に読んだような気がするのだけれど、
今回読んでこれだけ強烈な印象があるということは、
もしかしたら前回読んだのは、子供向けにリライトされたバージョンだったのかもしれない。
あるいは、自分がまだ精神的に子供すぎて、「悪」の魅力のようなものが、理解できなかったのかもしれない。


というわけで、これだけ装飾的な文章を、エンタテイメントとして楽しく読めたということは、
翻訳もきっと上手だったに違いない。
原文と照らし合わせたわけではないけれど、冒頭のシーンなどは、原文に忠実に、でも、読みやすく、
丁寧に訳されている感じがする。
ただ、気のせいかもしれないけれど、第11章から突然、訳が生硬になったように思った。
原文の文体が、ここから急に変わるのかもしれないけれど。
このごてごてした文章を読みやすくすっきりと訳すのは、ほんとうに至難の技だと思うから、
もしかしたら途中でくたびれてしまったとしても、仕方ないかなあと思ったりもして。