競売ナンバー49の叫び
読書会前日の深夜、やっと読了。
- 作者: トマスピンチョン,Thomas Pynchon,志村正雄
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1992/11
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 45回
- この商品を含むブログ (53件) を見る
得意の「読み飛ばし」を完全に拒否した小説で、
固有名詞やなぞめいたことば・挿話の数々に、いちいちひっかかって、
わけがわからないまま、とにかく読みきった。
会社の先輩で、ピンチョンが大好きという人がいるので聞いてみたところ、
彼は、「普通のミステリーみたいに読めばいいんだよ」とあっさり言った。
たしかにミステリ仕立てだし、書き出しは普通の小説みたいなフリをしてるのは間違いないのだが。
彼によれば、この「競売ナンバー49の叫び」は、ピンチョンの中で最もとっつきやすく、
ピンチョンの入門に最適、とのことだった。えーっ、そうなの?? という感じ。
読書会は大盛況。3、4人のときもあるのに、なんと9人も集まり、さらに資料を用意してきている人もいて、
皆さんの勉強家ぶりに感心することしきり。
メンバーのほとんどがプロの翻訳家で、とくに学生時代ピンチョンを集中的に勉強したという人までいたこともあって、
きわめてレベルの高い会話がとびかっていた(と、少なくとも私には思えた……)。
声の人格化、精神分析的読み、「場」を主人公とする手法、解放の道しるべとしてのヒエログラフィック、
アメリカ発見とカバラ思想、救済としての船、ファクトとフィクションの混在、ネットワークの象徴としての郵便、
「窓」のイメージ、決定的な啓示を放つ喇叭。
以上が、なるほどなるほどと感心しながら、私がとったメモ。
でも、ほんとうにいちばん共感したのは、
会が終わってランチをいただこうとしたときにメンバーの二人が話していた、
「なんか、電車の中とかで、喇叭の絵とか見つけちゃうんじゃないかってきょろきょろしちゃうよね」
という言葉だったりする。
それからもうひとつ、ラストがかっこいい。
謎解きが完結しない、という見方もあるだろうけれど、
ここはこれ以外ありえないってくらい完璧な終わり方。
ここまで苦しくても読んできた甲斐があった、まさに小説の醍醐味!という感じ。
皆さんの鋭いレビューに比べ、ずいぶん貧弱な感想しかもてず、
ひとつとして立派な発言はできなかったけれど、
読書会がなかったら、読書会に参加表明していなかったら、
きっと途中で挫折していただろうなあと思う。ので、読書会に感謝!!
さて、今夜から、いよいよ古典新訳文庫に突入します。