「ねじの回転」新訳読了

昨夜遅く、古典新訳文庫の「ねじの回転」読了。

ねじの回転 (光文社古典新訳文庫)

ねじの回転 (光文社古典新訳文庫)

再読のはずなんだけど、ほとんどストーリーは覚えていなかったので、
初めて読むようなどきどき感とともに読み終えた。
解説にもあったように、この本は「幽霊話」として読むべきか、主人公の家庭教師の妄想として読むべきか、読んでいる途中からずっと迷っていて、
最後までいっても結局、自分なりの「結論」は出なかった。
子どもたちも、家政婦も、雇い主も、ひどくリアリティーがなくて、
やたらと思わせぶりな、奥歯にもののはさまったような言い回しを多用する。
同居人に聞いたら、ヘンリー・ジェイムズはめちゃくちゃ難しいそうで、
それをこんなふうに、不明瞭な感じ、曖昧な感じをしっかり残したうえで、読みやすく訳しているのは、
やはり、名手・土屋政雄ならではなのだろう。


読んでいる途中、ふと、なんだかお芝居を見ているみたいだな、と思った。
リアリティーのない登場人物、不自然なせりふまわしが、全体にぎくしゃくした、ざらざらした感じをかもしだしていて、
なんとか理解したい、自分なりの落としどころを見つけたい、という気持ちがあおられる。
よくわからないお芝居を、身を乗り出してみているような感じになる。
映画ではなくて、お芝居がいい。幽霊が出てきて暗闇でドアがバターンとしまるようなホラー映画じゃなくて、
古いお屋敷を舞台に、登場人物がみな、少しずつ変で、暗い話なんだけどかすかに滑稽。


本の雑誌」最新刊、国書刊行会の歴史についての藤原編集室さまの文章から引用。
   ……流行りすたりに関係なく、自分が面白いと思うもの、本にしたいものを頑固に追い求める姿勢は、
   むしろ出版の正道といっていいのではないか。
   出版なんてそもそもが野蛮な商売だ。
   「前例がない」「部数が読めない」といった声に屈しているようでは、面白いものが出てくるわけがない。
   (15ページ)


藤原編集室さま、さすがです…