新聞広告

今日の朝日新聞朝刊には、古典新訳文庫『カラマーゾフの兄弟』の大きな広告が出ている。
カラマーゾフの兄弟』ついに完結!という大きな文字の横に、訳者の亀山郁夫さんの言葉のほか、
五名の作家・文芸評論家の短評がついている。
そして、広告の最下段には、老眼になりつつある目にはちょっとつらいくらいの小さな文字で、
光文社古典新訳文庫 好評既刊」として、これまでに出た28冊の書名がずらりと並んでいる。


この広告を見たとき、かなりずうずうしいのだけれども、会ったこともない作り手の人たちといっしょに、
何か大きな事業を手がけ、その成果があらわれつつあるのを目にしているような感慨にうたれた。
650円とか520円とかいう値段のついた文庫本の中に、どれだけの英知と思いがつめこまれていることか!
はるか昔の原著者と編集者の出逢いがあって、世界中の読者に愛され、複数の翻訳者と編集者が汗を流し、
さらに数多の顔の見えない読者に育てられて、今、わたしの手に届く。
うまくいえないのだけれど、歴史の中の一体感というか、大きな流れの中に参加している感覚、のようなものに襲われて、
胸を衝かれたのだ。


そういえば、この広告の辻原登さんの短評の中に、
数日前の私のブログでの疑問「ドストエフスキーは何歳向けか」への答えが書いてあったなあ。


   『カラマーゾフの兄弟』は、絶対に二十歳までに読んでおかなければならない。
   二十歳すぎてからではもう遅い。これが、僕がつかんだ真実だ。


うええ、やっぱりそうかあ。でも、そう言われても仕方ないよなあ。
四十すぎでは「遅すぎる」ってことになってしまうけれども、
まあ、それでも読まないよりはマシ、読めた幸せをかみしめる、てことで。


個人的には、島田雅彦さんの短評がよかった。


   酒場によくいるドミートリー、大学の同級生みたいなイワン、
   死んだ後輩によく似たアリョーシャ、昔、付き合っていた女を思い出させるグルーシェニカ、……


わかるなあ、この感じ。


というわけで、昨夜遅く、『カラマーゾフの兄弟2』読了。
そのまま『カラマーゾフの兄弟3』へ突入。

カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)

カラマーゾフの兄弟2 (光文社古典新訳文庫)