会議、社員旅行、会議、誕生日、会議、出張、会議、公開講座、会議…

あああ、もうきりがないのだった。
前回ブログを書いてからの日々をまとめようとすると、
上のようなカンジになる。
この「会議」というのが、それなりに準備も大変で、内容も濃くて、だいたい1回3時間くらいなので、
終わったときにはほんとうにへとへとで、しばらく惚けたように頭が真っ白になるのだ。
ここ数日は毎日日付が変わってから帰宅。
ついに毎週金曜日のテニスレッスンをあきらめ、来年2月までお休みすることにした。


それでも、社員旅行や誕生日の食事、亀山さんの公開講座など、楽しい行事はしっかり楽しみ、
なんとか仕事一色の日々にならずにはすんでいる。
ただし、読書にはかなりしわ寄せがきているかんじで、
今年の社員旅行には仕事は持参せず(去年は大量のコピーを宿に持ちこんだのだった……)、
分厚い『チボの饗宴』を旅行鞄の底にしのばせていったのだが、
結局、開くことはできなかった。
同居人によれば、バルガス=リョサは、腰をすえて一気に読まないと楽しめないらしいので、
年末年始の楽しみに送ることにしようか。


しかし一昨日、東京言語研究所で行われた亀山郁夫公開講座で、吉報を耳にした。
待ちに待った光文社古典新訳文庫、亀山訳『悪霊』ついに完結!
12月8日第3巻発売!! とのこと。
おおー、読むぞー。12月の読書はドストエフスキーとバルガス=リョサで決まり!だ。
思えば翻訳の勉強をはじめてまもない30代前半に、
自分が世界文学の名作をあまりに読んでいないということに気づき、
いまの同居人に、「ドストエフスキーは何から読んだらよいか?」と相談したとき、
すすめられたのが『悪霊』だった。
その後、同居人の本棚にある古い文庫の『悪霊』を借りて挑戦すること数回、
いずれも読み通すことができなくて、わたしにはドストは無理なのかしら、と思った時期もあった。
でも、古典新訳文庫がスタートして全冊読破をめざして片端から読み始め、
亀山訳の『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』を読んで「やはり名作は違う!」とおそまきながら感激し、
読了したときには必ず、その年の「ベスト本」にピックアップしてきた。
それで亀山訳『悪霊』の1巻が出たとき、すぐにも買いたいと思ったけれど、
1巻を読み終えて続きが出るまで待つのはかなりつらいに違いないと思い、
完結するまで待つことにしたのだった。わーい、読むぞー。


公開講座は相変わらずの「亀山節」で、
『悪霊』が、ドストエフスキーが、翻訳が、文学が、好きで好きでたまらないのです!という叫びが聞こえてくるような、熱のこもった話ぶりで、
あんなに充実した「講義」を、3時間わずか1500円で聞くことができるなんて、
ものすごくおトクだと思った。
講義の内容は、『悪霊』の巻末ブックガイドをまとめたようなものらしい。
(ちなみにあまり知られていないかもしれないが、光文社版亀山ドストの巻末読書ガイドはものすごく充実している。
翻訳は素人の読者が日本語で書かれた文学作品として楽しむことができるように訳し、
専門的な背景知識等は巻末読書ガイドで紹介するという方針なのだと思うが、
これはすばらしいと思う。)
講義はまず、悪霊が発表された100年後の1972年1月、日本で何が起こったか、という問いかけから始まった。
はい、そうです、連合赤軍メンバーによる集団リンチ事件。
『悪霊』という小説もまた、革命家によるリンチ事件をきっかけとして書かれたもので……と話は続くのかと思いきや、
亀山さんの話はそこからどこへ向かうのか、前半30分を過ぎたころには既に、
革命の問題、宗教の問題、そして亀山さん言うところの「愛の不可能性をめぐるドラマ」としての捉え方と、
わたしの貧弱な脳みそはとてもたえきれないくらいの情報と情熱が、これでもかこれでもかと注ぎ込まれることとなった。
休憩をはさんで後半は、いったんレジュメに戻りましょうと言って説明をはじめたものの、
やはり話は脱線し、というより脱線の部分のほうが話としては面白く、
後半の肝はなんといっても、失われた「第二部第9章チーホンのもとで」をどうするか、という話題で、
これについてはあまりに話が込み入っているので、とてもまとめることはできないけれど、
翻訳や出版にかかわる仕事をしている人間にとってはきわめて興味深く、わくわくする話だった。
そして『悪霊』全3巻完結後に、この部分のさまざまなバージョンだけを集めて翻訳した「別巻(第4巻?)」を刊行する予定であるということが発表され、
公開講義の司会をしていた大津由紀雄先生は、言語の専門家だけに「この4巻だけでも読みたいですね」とコメントし、
亀山さんが「そういう人ばかりだと困るんですけど」と応じて笑いをとっていた。


公開講義の翌日、高校生にすすめる本を選ぶことを目的とする会議に出席(というか司会)。
ドストエフスキーカフカ、オースティン、ディケンズ……頭の中ではカタカナの作家名がダンスするが、
受け入れてもらえるのはごくごくわずかだ。
もちろん高校生くらいの頃に、日本の作家の名作を読むことも、とてもとても大切なことだと思うから、
外国文学ばかりに肩入れするつもりはない。
大学入試や就職には直結しないだろうけど、
高校生のときに読んだらその後の人生にじわーときいてくるような本を、
1冊でも多く紹介したいと思う。
そんなところに注目してくれる人は、わたしが作っている本の読者や購買者のごくごくごく一部だと思うけど、
自己満足だと言われるかもしれないけど、
でもこの1冊1冊の選択に、わたしはひっそりと情熱をそそぎたい。


会社のへんてこなルールで、何日以上連続勤務してはいけない、というのがあって、
今日は強制的に休みをとらされている。
といっても、全日休んでしまうと仕事が止まってしまって自分が苦しくなるので、
半休をとって今日はのんびり出社。
ここのところさぼり気味のダイエット生活(それゆえ体重減少も停滞気味)をいまいちど立て直し、
年末までにトータル3キロ減を目指そう。