『悪霊』読了!

年内ぎりぎりの駆け込みで、『悪霊』読了。
といっても、実際に読み終えたのは、12月28日の深夜。
28日は会社の最終日だというのに会議があり、会社全体が仕事おさめでざわつく中、3時間編集会議、
年内にやらなくてはいけない仕事を食事もとらずに必死にやって、おなかぺこぺこで会社を出たのが11時半。
帰りの電車の中で残り数ページを読み切って、読了!!

悪霊〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

悪霊〈1〉 (光文社古典新訳文庫)

悪霊〈2〉 (光文社古典新訳文庫)

悪霊〈2〉 (光文社古典新訳文庫)

悪霊〈3〉 (光文社古典新訳文庫)

悪霊〈3〉 (光文社古典新訳文庫)

1巻は長い長いプロローグという感じで、ほとんど事件が起きない。
2巻は謎をかけるだけかけてさあどうなるんでしょうか、と投げ出して、
3巻で一気に謎解きというか、1巻・2巻で仕掛けておいた爆弾がばんばん爆発するという感じだった。
先に講演を聞いてしまっていたので、それぞれの登場人物たちに何が起きるかはわかっていたわけだけれど、
それでもどきどき感が減ることはなく、どっぷりのめりこんでこの長い小説を読み終えた。
登場人物の多さ、エピソードの多さなど、これぞ長編小説の醍醐味、という感じだった。


カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』『悪霊』と読んできて、それぞれに魅力があるのだけれど、
この『悪霊』についていえば、女性の登場人物たちがとくに魅力的だと思った。
なんといっても、ワルワーラ夫人。リーザ、ユーリヤ夫人、マリヤ・レヴャートキナ、シャートフの妻マリヤ。
みんなやたらと激しい性格で、かなりデフォルメされているんだけど、
でもその愚かな感じがなんとも言えず魅力的で、哀しく、切ない。
わたしから見るとダーシャはあんまり面白くなくて、すぐに罵倒したり卒倒したり激怒したりする、愚かな女たちがあってこそ、
この男たちの革命のドラマが成り立つんだよなあ、と思う。


ただ、二人の「悪魔」のうち、たしかにスタヴローギンは大変魅力的なのだけれど、
小物のピョートルのほうは、最後まで、惹かれることはなかった。
お父さんのほうはものすごく個性的で滑稽で、1巻を読んでいるときは、これはコメディーか、と思うくらいだったんだけど。
3巻に入ると登場人物がバタバタ死んで話は暗い展開になるわけだけど、それでもピョートルのお父さんが出てくると、そこはかとなく可笑しさが漂って、
やっぱりこの小説を「小説」たらしめているのは、このヴェルホヴェンスキー氏なんだなあ、と再認識する。


「革命」ということについていえば、
たまたま『悪霊』の2巻を読んでいるころに、同居人が借りてきた映画「マイ・バック・ページ」を観たので、
ピョートルと松山ケンイチ演じる「過激派」の姿がかぶった。
ついでにいうと、さっき、同居人が借りてきた映画「青春の殺人者」というのも観て、
この水谷豊が演じている殺人者も、ピョートルと重なった。
たぶん、わたしも10代、20代のころにこの『悪霊』を読んだら、
ピョートルとスタヴローギンにシンパシーを寄せ、革命テーマの小説として読んだのだろうけれど、
自分が今や40代も後半に入り、彼らよりも彼らの親世代の年齢になってしまっているせいか、
ワルワーラ夫人とヴェルホヴェンスキー氏についつい関心が向いてしまうのだった。
さっき観た「青春の殺人者」も、息子に殺されてしまう両親のほうがどうしても気になってしまう。
母親役の市原悦子がものすごかった。一度見たら忘れられなくなりそうな映画だけれど、
どう考えても大晦日にふさわしい映画ではなかった。暗すぎた。原作は中上健次
マイ・バック・ページ」は川本三郎原作で、20年くらい前に文庫で読んだ。
本のほうが重層性があって面白かったような気がするが、
でも、川本三郎役が妻夫木くんで、「迷える青年」という役どころがぴったりでとてもよかった。

マイ・バック・ページ [DVD]

マイ・バック・ページ [DVD]

青春の殺人者 デラックス版 [DVD]

青春の殺人者 デラックス版 [DVD]


今年は年末に里帰りすることにしており、仕事おさめの翌日、湘南新宿ラインで大船へ。
往復の車中で、先日ジュンク堂で買った石川九楊の文庫本を読了。

二重言語国家・日本 (中公文庫)

二重言語国家・日本 (中公文庫)

少し古い本だけれど、内容的には十分今もいきている。
仕事に差し障るといやなのであまり詳しくは書けないが、
教育現場やマスコミの漢字使用の制限についての意見など、おー、よくぞ言ってくれました、という気分で読んだ。


さて、今年ももうあと数時間。
今年はさきほど書いたように、年末ぎりぎりまで猛烈に忙しく、
12月はその日のうちに帰宅できた日が数えるほどしかなかったため、
ブログもほとんど更新できなかったし、年賀状の準備も間に合わず、
さっき急いで宛名を印刷し、いつものように一筆書き添えることをせずに、投函してしまった。
というわけで、恒例の「今年の読了本ベスト」も、ちょっと年内に書くのは難しそうだ。
(『悪霊』の感想だけは、なんとか今年のうちに、と思って、まとまりのない感想をずるずると書いたけど。)


なので、「読了本ベスト」は、年明け早々にエントリーすることにします。
今年も一年間、つたない文章におつきあいくださった方々、どうもありがとうございました。
来年は仕事面が少し楽になるはず(!)なので、もっと本が読めるのではないかな、文章も書けるのではないかな、と淡い期待を抱いています。
でもまあ、これからもこんなペースで、無理をせず書き続けていこうと思います。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
来年が皆様にとってよい一年になりますように!