「S先生のこと」のこと

ここ数日、一時的ではあるが、睡眠時間3時間程度の多忙な日が続いた。
終電まで仕事をし、持ち帰って仕事をし……というわけで、
読書はぴたりと止まってしまっている。
でも、最近は、毎日欠かさずチェックしている感動的なブログ連載があるため、
通勤列車の中で退屈することはないのだった。


それは、「教授のおすすめ!」という、軽薄そうなタイトルのブログ。
アメリカ文学の教授が書いているページだけあって、
内容は濃いし、日常的なことが書かれていても素人さんとはひと味違う。
これまでも毎日チェックをして、楽しく読んでいた。
この「教授のおすすめ!」で、数日前から、「S先生のこと」という連載が始まった。
現在連載は17まで進んでいるのだけれど、
これがもう、なんともいえず感動的なのだ。
亡くなった恩師の思い出を、あふれる思いのままに書き進めていく、というスタイルなのだが、
そのエピソードの選び方、話の運び、言葉遣い、会話の引用など、
これはもう、はっきりと「ブンガク」だと思った。
今朝は電車の中で、「S先生のこと16」を読みながら泣いてしまったし、
先日は「S先生のこと11」の引用を読んで泣いた。
翻訳のことに触れている「S先生のこと7」は、翻訳に関わったことのある人なら皆、姿勢をたださずにはいられないだろう。
何度か、コメントを書こうと思ったのだけれど、
何を書いても薄っぺらになりそうで、この感動的な世界を汚してしまいそうで、やめた。


仕事で、小説家や評論家などさまざまな書き手の文章をひたすら入力するという機会があった。入力をしてみてはじめて、文章の良し悪しがわかる、ということがある。
ノーベル賞候補の作家Mや、入試頻出の評論家Wの文章は、好き嫌いは別にしてやはりうまい。
一方、なんだか「うまそう」に書いてあるんだけど「実のない」文章とか、
やたらと抽象語を使ってるけど論旨が不明瞭な文章とか、
ざっと読み流したときには気づかなかった「アラ」が、
やたらと目立ってくるものもあった。


今日でちょっと一段落したので、
これからまたゆっくりと読書などしてすごしたい。
来週から夏休みだ。