「モンキービジネス」ほか

連休中、唯一遠出したのは、茨城県の大洗と笠間。
ネットで特急の切符をとり、上野駅構内のお気に入りのおにぎりやさんでおにぎりを買った。
鞄の中の携帯本は2冊。ノーマ・フィールドの『小林多喜二』と、ベネットの『やんごとなき読者』。
上野までの車中で少し読んだけれど、どちらも旅の友向きではない(少なくとも今日の気分では)と思い、
構内の書店に入った。
「モンキービジネス」の最新刊が出ていたので、「お!これは旅向き」と思い、購入。
「対話特集」とかで、村上春樹のインタビュー(聞き手は古川日出男)と、
川上弘美×小川洋子×柴田元幸の対談がメイン。
「いかにも」の人選なんだけど、「やっぱり」読まずにはいられないんだな〜。

モンキービジネス 2009 Spring vol.5 対話号

モンキービジネス 2009 Spring vol.5 対話号

水戸行きの特急に乗り込み、座席につく。
前の座席に座っている女性が読んでいる本をひょいとのぞいてびっくり。
さっき買ったばかりの「モンキービジネス」だった。
ほええ。
前の人はどの辺を読んでいるのかな……という妙な親近感を抱きつつ、車内読書は進む。
やはり、冒頭の村上春樹のインタビューは、なかなか読み応えがあった。
というか、私は村上ファンというほどではないので、これまでこういうものを読んだことがなかったせいかもしれない。
結構、へえ、と思うようなこともあったし、古川日出男が変に媚びてないのもよかった。
時期によっては一心同体のような柴田さんが責任編集の雑誌だからなのか、村上春樹による脚注コラムみたいなのもあって、
かなり力の入った企画だった。
一方、私も大好きな女性作家2名と柴田さんの対談は、初めて聞く話ばかりのはずなのに、前にも聞いたことがあるような気がして、
個人的にはちょっといまひとつ、という感想。
小川洋子は柴田さんの登場によって、「これは翻訳だから」と言い聞かせる必要がなくなり、「日本語と小説がぴったり心地よく密接した状態になった」(86ページ)
と語っていて、ほお、そうなんだあ、と思った。
それに対して川上弘美が、1970年代後半にサンリオ文庫で翻訳していた「若い人」として、沼野充義井辻朱美松浦寿輝、の名前を、
SFやミステリの世界で活躍していたすぐれた翻訳家として、浅倉久志伊藤典夫深町眞理子、の名前をあげていて、
うん、うん、なるほど、と思った。
どちらがいいとか悪いとかじゃなくて、これが、自分と同世代の人たちの翻訳小説との(幸福な)出会い方の、2つのパターンなんだな。
(隣の座席に座っていた男性(って同居人ですが)は、このどちらでもない、幸福な出会い方をしたそうだが……)
前の座席の女の人は、この「モンキービジネス」を読んで、どんな感想を持っているんだろう。話しかけてみたくなった。


小林多喜二』は挫折。
ノーマ・フィールドの文章は品があってとてもよいのだけれど、ちょっと今の気分に合わなかった。
『やんごとなき読者』を読書中。
イギリス人の本好きには、細部の工夫がたまらないのだろうなあ、と想像はつくのだけれど、
自分の知識が貧弱なので、ほんとうに楽しんで読めてはいないような気がする。
というわけで、このゴールデンウィークは、疲れているせいもあって、あまり読書がはかどらなかった。


「疲れているせいも」と書いたように、読書がはかどらなかった一番の理由は、別にある。
いつだったかの連休か年末年始、読書をするはずだったのに、「チャングム」三昧になってしまったことがあった。
今年の連休も、なんと、韓国ドラマを観続けてしまったのだ。
ファン・ジニ」という歴史ものなんだけど、これもおもしろかったんだよね〜。
(個人的な好みで言えば、「チャングム」のほうが上、という気がするけど。)


昨日、河出の世界文学全集の最新刊が届いた。
エリアーデ『マイトレイ』と、モラヴィア『軽蔑』。
あ、今の気分には、こういうのが合うかも。