ユリイカ9月号

ユリイカ2006年9月号の特集は、「理想の教科書」。
高校教科書の編集委員をつとめる石原千秋さんと書評家の斎藤美奈子さんとの対談が非常に面白かった。
とにかく「教育」「教科書(とりわけ国語の教科書)」となると、
だれでも一家言あるというか、何かしら「言いたいこと」がある。
多くの場合、「子どもの頃作文の宿題で……」「高校の国語のテストで……」
というかたちで、国語科教師によっていかに自分が傷つけられたか、
間違った(と思われる)国語教育を受けたか、というエピソードとともに語られる。
そういう状況の中で、「専門家」たる石原さんの健闘ぶり、というか、四苦八苦ぶり、というか、
が、すばらしい。さすがだ。


『国語教科書の思想』を読んだときも、同じような感想をもった。
じつは以前に石原さんの著作の中で、ご自身のお子さんの教育について記しているものを読んで、
やや辟易したという経験があり、そういう意味では色眼鏡で見ていた部分があるのだけれど、
なかなかどうして、すごい人だ。立場上、あまり手放しでほめてはいけないのかもしれないけれど、
とりあえず会社の仕事とは関係なく書いているこのブログでは、すごい人だ、と言い切ってしまおう。


「国語の先生や国語の教科書の編集者は本好きに違いない」
と思っている人がいたら、それは間違いのようです、と答えよう。
先生たちは生徒指導や事務処理に疲れ、1ヶ月に1冊も本を読んでない。
教科書の編集者は「学習指導要領」と「現場のニーズ」をよむのに忙しく、
自分の好きな文学作品を読む時間なんてない。
……と、これは極論だけど。もちろん、ものすごい読書家の国語教師も教科書編集者もいるんだけど、ね。


明日は富山に出張。
あさっては翻訳文学ブックカフェ。
今月中にピンチョン読み終わりたいなあ。

国語教科書の思想 (ちくま新書)

国語教科書の思想 (ちくま新書)