わたしを離さないで

久しぶりに吉祥寺の啓文堂に行く。
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』が売れている本の第1位になっているのを見てびっくり。
そういえば啓文堂久我山店でもイシグロ・フェアをやっていて、「おお、奇特な書店だ」と思った記憶がある。
翻訳者の土屋政雄氏が牟礼在住ということとは関係ないだろうけれど。

わたしを離さないで

わたしを離さないで

土屋さんの翻訳はいつも素晴らしい。
とくにカズオ・イシグロは、全作品土屋さんに訳していただきたいくらい、素晴らしい。
イシグロの作品は、何を読んでも同じ、という声を時々聞くけれど、それは、読み終わるとどの作品も同じように、心の奥深いところに何かが触れたような感じを残す、という意味で同じ、なのだと思う。
たとえばこの作品だって、設定はミステリ仕立てというか、ちょっとSFっぽいというか、奇想天外といえなくもない。
同じく土屋さんの翻訳で出ている『日の名残り』とは、設定そのものは似ても似つかない。
でも、どちらもやっぱり、イシグロの作品、土屋さんの訳文で、翻訳小説を読む喜びをじんわりと味わうのだった。

そういえばこの数ヶ月、このイシグロの作品も含め、翻訳小説の名作をいくつか読んだ。
オースティン、マキューアン、スウィフト。
書きたいことが山ほどあるので、次回以降に。

今日、啓文堂で買った本は、3冊。
秋山豊『漱石という生き方』
いしいしんじ『ぶらんこ乗り』
Akutagawa "Rashomon and Seventeen Other Stories"
どれも早く読みたいが、昨日買った小森陽一村上春樹論』が先かな。