読了本をとりあえず。その2

まったくブログが更新できていないけど、読了本を忘れてしまいそうなので、とりあえず列記、その2。今月は仕事で読まなくちゃいけない本があったりして、いまひとつ自分読書が進まず、読了本が少ない。あらためて見ると、最近日本の小説をあまり読んでないなー。河出の日本文学全集も、インテリアになってる。

赤毛のレドメイン家 (創元推理文庫 111-1)

赤毛のレドメイン家 (創元推理文庫 111-1)

ミステリ編集道

ミステリ編集道

読了本をとりあえず。

それほど忙しいわけでもないのに、やはりツイッターをはじめてから、ブログのほうはすっかりおそろかになっている。自分のために書いているブログだから、それはそれで別にいいのだけれど、ツイッターだと読了本リストの代わりにはならないのでちょっと不便。というわけで、この1ヶ月の間の読了本を、とりあえず並べておく。この一ヶ月の読書はわりと好調で、年末のベストに入ってきそうなものがほとんどだった。

樽 (創元推理文庫 106-1)

樽 (創元推理文庫 106-1)

黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実

黒い迷宮: ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実

虹色と幸運 (ちくま文庫)

虹色と幸運 (ちくま文庫)

忘れられた巨人

忘れられた巨人


クロフツの「樽」は、実際は家にあった新潮文庫の宇野利泰訳なんだけど、書影が出てこないのでほかので代用。

ロンドンひとり旅その後

初日ははりきって記録をしたものの、2日目以降、毎日、へとへとでホテルにたどり着き、お風呂に入って、爆睡、という生活を繰り返していたため、結局ブログは更新できず。なんと、いまはもう日本。あとで印象に残ったことなどを書くかもしれないけど、とりあえず行ったところ、やったことだけ、記録しておくことにする。


2日目 ステニング訪問
時差の関係で、早朝目覚める。宿から徒歩3分のバンクサイドを散歩。そのまま歩いてウォータールー駅へ出て、地下鉄でロンドン・ブリッジ駅。バラ・マーケット、サザーク大聖堂などを見て、宿で朝食。フル・イングリッシュ・ブレックファスト。食後、歩いてブラックフライアーズ駅へ。ブラックフライアーズ⇄ブライトンの往復チケットを買う。ブライトン⇄ステニングはバス。これも往復チケットを購入。ステニング滞在時間は約2時間ほど。ステイ先の家、英語学校の建物、ハイストリートをぶらぶら。ほんとに小さな町なのに、本屋さんが一軒あって、それが変わらず残っていた。ロンドンに戻り、そのまま宿へ。宿でクランベリージュースとフィッシュ&チップスの夕食。


3日目 自転車と船で市内観光
宿で朝食。アメリカン・パンケーキ・ブレックファスト。宿から1分のバス停からコベント・ガーデン行きのバスに乗る。途中下車して、仕事で関係のあるロンドンの老舗出版社へ。もちろん、約束も何もしていないので、建物を見るだけ。立派な門構えの美しい建物。そのまま歩いてウォータールー橋を渡り、サウスバンクの自転車ツアー会社へ。3時間の自転車ツアー、ロンドンパスで無料。これはほんとに素晴らしかった。詳細はいつか書く。今日はとにかく記録のみ。ウォータールー駅へ戻り、地下鉄でベイカー・ストリートへ。シャーロック・ホームズ博物館。ここはロンドンパスがきかないので入場料10ポンドと自宅用にちょっとしたお土産を購入。地下鉄でタワーヒル駅へ。テムズ川クルーズに乗船。ロンドンパスで無料。ウエストミンスターで下船。ウエストミンスターからコベントガーデンまで地下鉄。コベントガーデンで夕食。さびれたパスタ屋さんでスパゲッティ・ボロネーゼと紅茶。歩いて最終日に芝居を見るクイーンズ劇場の場所を確認。そのままピカデリーサーカスまで歩き、地下鉄でサザーク駅へ。TEPCOエクスプレスでオレンジジュースとポテトチップスを買って、ホテルへ戻る。


4日目 ブックフェア
宿で朝食。フル・イングリッシュ・ブレックファスト。地下鉄サザークからグリーンパークへ、ここからバスでオリンピア展示場まで。ブックフェアについては、詳細はたぶんのちほど。一言でいうと、場違いであった。ほとんど口を開くことなく、ただただ足が棒のようになって時間を過ごす。会場を早めに出て、ケンジントンパークを散歩、ロイヤルアルバート・ホールを見学。ロイヤルアルバート・ホール2Fのイタリアンレストラン「ヴェルディ」で昼食。エビのリングイネと紅茶。これはめちゃくちゃ美味しかった。地下鉄でサザークへ、そのまま宿へ戻り、少し休憩。19時にグリーンパークへ。ブックフェアに来ているエージェントの方と会食の約束。観光気分のこちらと異なり、先方は3日間、フルに仕事で予定がつまっているそうで、申し訳ないような気持ちだったけど、結局この旅行中、人と食事をしたのはこの一回きり。ずっとゆっくりお話をしてみたいと思っていた方だったので、すっかりはしゃいでしまい、ポルトガル料理を食べながら話がはずむ。タクシーで宿へ。


5日目 郊外観光
宿で朝食。エクスプレス・ブレックファスト(イングリッシュ・ブレックファストの簡易版みたいなやつ)。バンクサイドをゆっくり歩いてウォータールー駅へ。BRでハンプトンコート宮殿へ。かなり見応えがある。何年も前に訪れたベルサイユ宮殿を思い出した。ロンドンからオイスターパスで行けるし、ロンドンパスで入場料無料。ここはおすすめ。BRでウインブルドンへ。ウインブルドン駅の食堂みたいなところで、ペンネアラビアータとオレンジジュースの昼食。めちゃくちゃ辛かった。バスでウインブルドン博物館へ。前日からネットで申し込んでおいた、ウインブルドン見学ツアーに参加(これもロンドンパスで無料)。センターコート、見てきた。ジミー・コナーズとか、クリス・エバートとか、自分の若い頃のヒーロー、ヒロインの写真なども飾ってあって、テニスファン必見。自分用にちょっとしたお土産購入。バスでウインブルドンへ戻り、ウォータールー経由でチャリングクロスへ。チャリングクロス駅から歩いて憧れの書店フォイルズに訪れる。足が疲れていたので、まず5Fのカフェへ向かい、キッシュと温野菜、紅茶の夕食。5Fから1階ずつ降りてきて結構まんべんなくみてまわった。やっぱり本屋は外国でも居心地がいい。気づいたら3時間ほど経過しており、外は真っ暗。急いで地下鉄でホテルへ戻る。


6日目 文学散歩
気づけば観光最終日。朝食はアメリカン・パンケーキ・ブレックファスト。宿から歩いて8分のシェイクスピア・ブローブ座へ。9時半からのツアーに申し込み、先に展示を見学。ツアーは英語だけど、これまで自転車ツアーやウインブルドンツアーで、まあまあ理解できていたので、たかをくくっていた。が、こちらはそういうスポーツ系のツアーと異なり、かなり内容に踏み込んだ、しっかりした説明だった(っぽい)。情けないことに、理解度は20パーセント、というところか。あとで復習しようと思い、パンフレットを購入。ツアー自体はロンドンパスで無料。そのままバラ・マーケットを経由してロンドンブリッジ駅まで歩き、ウエストミンスター寺院へ。前にロンドンを訪れたとき、一番感激した観光地だったので再訪。やっぱりよかった。ポエッツコーナーの名前をひとつずつ確認しながら、英文学をまなんでいた若かりし頃を思い出す。そのまま、卒業論文のテーマに選んだ、ロマン派詩人キーツの博物館へ。ここも再訪だけど、前回(26年前)きたとき「絶対またこよう」と思ったので、地下鉄でハムステッドへ向かった。ハムステッドの駅近くのウォーターストーンズ書店のカフェで昼食。フォイルズ同様、書店内のカフェはひとり客が多く、皆静かに飲食しているので、入りやすいし落ち着く。スコーン2個と紅茶。キーツ博物館へ。ここはロンドンパスは使えず、5.50ポンド払うのだけれど、1年間有効のパスをくれる。1年以内にまた来ることはないだろうなあ、と思いつつ、なんとなく嬉しい。グーグルマップで調べて、ハムステッドには戻らず、バスでディケンズ博物館まで1本。ディケンズ博物館は予想外によかった。キーツに比べると長生きしたし、社会との関わりも深いので、博物館としての見所も多い。見終わったときには、うーん、ディケンズ集中的に読んでみようかな、という気分になる(もちろん翻訳で)。こちらはロンドンパスで無料。閉館ぎりぎりまで見学し、17時過ぎに本日のメインイベント、ミュージカル観劇に向かう。バスでレスター・スクエアへ。まずはチャイナタウンで夕食。エビの揚げ焼きそばとジャスミンティー。なかなか美味。クイーンズ・シアターへ行き、日本から予約しておいたチケットを受け取る(最前列!)。近くのカフェで紅茶とケーキで時間をつぶし、19時半からミュージカル。演目は「レ・ミゼラブル」。少女の頃に『ああ無情」を読んで以来、大好きな物語で、大人になってから翻訳も読んだし、ストーリーはわかっているので、英語でもだいじょうぶ、と思って申し込んだ。で、予想どおり、英語はあまり聞き取れないけど、でも、十分堪能できた。役者さんの演技と歌声もさることながら、劇場の雰囲気、お客との一体感も最高。夢のような3時間だった。タクシーでホテルへ。お風呂に入ってすぐに寝る。初めて目覚ましをかけ忘れた。


7日目 最終日、帰国
前日、目覚ましをかけ忘れたため、初めて寝坊。起きたら8時。急いでシャワーを浴び、朝食へ。最終日の朝食は、やっぱりフル・イングリッシュ・ブレックファスト。6日間、毎日サーブしてくれた素敵な店員さんにお礼を言う。ここの朝食は最高だった。部屋に戻って荷物をつめて、10時ぎりぎりにチェックアウト。いい宿だった。次にロンドンに行くときも、また泊まりたい。場所、部屋、食事、サービス、すべて完璧。あ、窓から景色だけはかなり悲惨(廃墟好きにはおすすめ。となりのビルの朽ち果てた様子が見える)。これまで6日間、ほとんど買い物をしていなかったので、この日まとめて買い物へ。(スーツケースは宿が預かってくれた。)アクアスキュータム、リバティー、フォートナムアンドメイソン、とお決まりのコースを巡っているうちに2時を過ぎ、あわてて地下鉄で宿へ戻る。(昼食はリバティーで、ローストチキン・シーザーサラダと紅茶。)宿からタクシーでパディントンへ、パディントンからヒースローエクスプレスで空港へ。空港では残りの買い物。ラウンジでお茶。空港内を15分以上歩かされるのには驚いたけど、それ以外はきわめて順調。飛行機も行きと同様、そんなに揺れず、機内食も美味しくいただいた。ただし、「半沢直樹」を2話〜10話まで見続けたため、一睡もできなかった。羽田からはバス、タクシーと乗り継いて、19時前に、無事、帰宅。わりと元気。あっという間の1週間だった。何よりありがたかったのは、1週間、ずっと好天に恵まれたこと。結局、傘をさすことは一度もなく、やりたいと思ったことはすべてやった、という満足感とともに帰国できた。

ロンドンひとり旅初日

完全にお休み状態になっているブログだけど、昨日から1週間、ロンドンに旅行に来ているので、その間にあったことを気が向いたら書き留めることにする。ブログをはじめた頃の「初心」に戻って、あくまで自分のための覚書として、あまり推敲などせずに書いておこう。

昨日の朝8時頃に家を出た。荷物は小さめのスーツケース1つといつも会社に持って行っているバッグ1つ。あまり荷物を増やしたくなかったので、持っていく本も文庫本に限定。結局、未読の古典新訳文庫2冊とクロフツの『樽』(新潮文庫のすごく古いやつ)。飛行機の中で「樽」を読み始めたけど、ロンドンの地名がたくさん出てきて、地図を思い描きながら読むとかなりわくわくする。ただ、昔の文庫本、しかも古本屋で買ったものなので、字が小さくて老眼の目にはかなりつらい。。。というわけで、飛行機の中では映画を3本みて時間をつぶした。


飛行機の中でみた映画は、「博士と彼女のセオリー」「イミテーション・ゲーム」「アナと雪の女王」の3本。どれも、日本語は吹き替えしかなかったので、がんばって英語でみてみた。「博士と彼女のセオリー」は、主演の二人の演技がすばらしかった。「イミテーションゲーム」は、うーん、カンバーバッチさまを見るために見るって感じかな。巷で話題のディズニー映画は、こんな機会でもないとみないなと思ったのでみてみたけど、うーん、映像の力ってすごいな、と思った。ストーリーは他愛のないファンタジーだし、英語だから全部聞き取れるわけじゃないんだけど、うーん、子供に人気があるというのもうなずける、と思った。ディズニー映画ほぼ初体験の感想でした。

羽田で手荷物優先カウンターというところに並んだんだけど、これがものすごく混雑してて、イギリス人とおぼしき人が、「これじゃ予約した飛行機に乗り遅れてしまう。もっと手荷物優先カウンターのブースを増やせ。責任者を出せ」とANAの職員に抗議していた。たしかに、手荷物優先カウンターのところは、オートチェックイン、というのを済ませている人たちが並んでいるので、そんなに時間の余裕をみてない人が多いらしく、私の後ろの日本人の家族も、「普通のチェックインにしたほうがよかった」と不満げだった。それで、イギリス人から猛烈な抗議を受けたわりと若い女性の職員が、電話で「どなたかマネジャー、お願いします。クレーム対応お願いします」と言ったものだから、それ聞いてた日本人が一斉に苦笑して「クレーム対応って。。。」とざわざわっとする、という小さな事件があった。思うに、このイギリス人のクレームはもっともで、日本人はおとなしく並んで待っていたけど気分的には彼の言い分に賛同していたということが半分、担当の女性職員がこの事態をどうさばくか、と注目していたことが半分、というところなんだろう。自分だったらどうするかな、と考えたら、まあ、イギリス人には英語でJust a moment, please. とか言ってその場を離れ、イギリス人にも日本人にも聞こえないところで、「クレーム対応お願いします!!」と言うだろうな、と思った。目の前のイギリス人には日本語はわかるまい、という認識のもと、「クレーム対応」って言葉を使ってしまったということが、彼女のミスというか、小さな失策なんだろう。


ああ、そうだ。ANAのエコノミーの食事は、なかなか美味しかった。2回とも洋食を選んだけど、温かく味付けもちょうどよくて、満足。修学旅行だか留学だかの高校生の団体に囲まれて、まるで保護者状態だったのだけれど、皆礼儀正しくおとなしい子ばかりで、機内でも慣れた様子で思い思いに過ごしていて、わたしのほうがよっぽどはしゃいでいるというか、興奮してるんじゃないか、という感じだった。考えてみるといまはネットがあるので、イギリスにいても自分がそうしたいと思えば、日本にいるのとまったく同じ生活を継続することができる。26年前にわたしが語学留学したときは、日本にいる家族や友人にエアメイルを送り、どうしても必要なときだけ、公衆電話から電話をしたものだった。日本から持って行ったガイドブック以外は、イギリスの店やホテルについての情報を調べる術もないから、B&Bやバスツアーを予約するのに、現地調達の英語のガイドブックで調べて、ドキドキしながら英語で電話をかけたのだった。


入国審査は長時間並んだわりにあっさりと終了。こちらが発した英語は、Yes. とかThank you. とか、長くて 7 days. くらい。イギリス人の英語の先生のアドバイスに従い、初日はケチケチせずにヒースローエクスプレスでパディントンへ、パディントンからタクシーでホテルへ、という贅沢ルートでホテルまでたどり着いた。先生は、ロンドンのブラックキャブの素晴らしさを力説していたけど、わたしが乗ったタクシーはたまたまなのかもしれないが、わたしが乗っている間じゅう、ずっと友人らしき人と電話でしゃべっていて、お世辞にも感じがいいとは言い難かった。ともあれ、久しぶりに見るロンドンの街並みはやっぱりすばらしく、あー、わたしはやっぱりイギリスが好き! ミーハーだと言われてもかまわない! と思ってしまった。予約していたホテルも期待どおり。もちろん国内でさんざん調べて自分好みの宿を予約したんだけど、ガイドブックに写真が出ていたまさにその部屋(部屋ごとに内装が違う)をあてがわれて嬉しい。宿の感想は、何日か過ごしてみてからあとで書くことにして、今日のところはこれくらいに。

眠れないので

先ほどとても大切な友人の訃報がツイッターで流れてきて、とても信じられなくて連絡のありそうな人に確認したら、やはり本当だとのこと。闘病していたのは知っていたけれど、私と同い年だし、1年前にはイベントにも出て、「見に来てね」と元気なメールをもらったので、快復しているのだと思っていた。「やっと翻訳書を担当できるようになったから、一緒にお仕事をするのを楽しみにしています」と書いたわたしの年賀状を見ることなく、大晦日の朝、彼女は逝ってしまった。


出会ったのはいつのことか、よく覚えていない。たぶん、20年くらい前だと思う。同い年、B型同士で、不思議に気が合った。30代前半はふたりとも駆け出しだったけれど、いつだって彼女が少しリードしていて、その差は年々広がった。でも、売れっ子になったからといって彼女は変わることなく、時折会っては翻訳の話や文学の話を、長い時間したものだった。いつだったか私が、文学ものの翻訳をやりたいけれど、東大英文科の大学院の人とかにかなわない気がする、と弱音を吐いたことがあって、そのとき彼女はかなり強い口調でそれは甘えだと私を叱った。「専業翻訳者には文学研究者にない良さがあるはず。今まで自分がやってきたことを信じなくてどうする」という言葉の裏には、彼女自身の誇りと不安がこめられているような気がした。「人生80年と仮定して、この先何冊翻訳できるか」と話しあったこともあった。2年前に会ったとき、「まだ訳したい本がいっぱいある」と言っていた。病気が見つかってからも、「ぜったい元気になるんだー」とメールに書いていた。


妹も、ほんとに最後まで、病気に立ち向かっていた。「わたしは死なない気がする」「元気になる」って言って、あきらめなかった。どうしてだろう。どうして、何も悪いことしたわけでもないのに、33歳とか50歳とか、そんな若さで死ななくちゃいけないんだ。なんでよりによって妹に、彼女に、その役割が振り当てられたのだろう。悲しくて、さっきから泣きっぱなしだけど、でも明日は普通に英語のレッスンを受けたり、会社で新年の挨拶をしたりするんだ。大事な友人がいなくなっちゃったっていうのに。


ツイッターフェイスブックは、こういう個人的なこと書きにくい気がしたので、ずいぶん前から書いているこのブログであまり何も考えずに思ったことをばばばーっと書いた。新年早々、こんな話題で申し訳ないけど、でもこのブログは、自分自身のストレス発散のために書き始めたものなので、ご容赦。

自己啓発本ベストセラー

昨日は実家に顔を出し、今日は自転車で近所に初詣(というか、お参りしてないので正確には屋台の焼きそばとたこ焼きを食べに)行った以外は、ほとんど家にいてダラダラと過ごすお正月。読書もがっつりした小説を読み始めるパワーがなくて、年末に通勤読書用に買った自己啓発本のベストセラーを飛ばし読みした。大変興味深かった。

フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質

フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質"を高める秘訣~

もちろん、この本は50歳のオバさんを「啓発」するために書かれたものではない。読者ターゲットはおそらく10代後半〜30代前半くらいまでの女子。何といってもタイトルがうまい。書店で平積みされているのをぱらぱらと立ち読みして、わたしが20代の頃にベストセラーになった同種の自己啓発本を思い出し、読者である日本の女の子たちの価値観が、ずいぶん変わってきているんだなと思って買ってみたのだ。そのバブルの頃のベストセラー本というのは、これ。
恋も仕事も思いのまま (集英社文庫)

恋も仕事も思いのまま (集英社文庫)


どちらも著者はアメリカ人。「思いのまま」のほうは、米誌「コスモポリタン」の編集長で、タイトルからもわかるように、仕事も恋愛も、とにかく貪欲にバリバリとやる。よく言えば向上心、平たく言えば上昇志向のかたまりのようなライフスタイルを提案している。欲しいものすべてを手に入れるために、努力、努力、努力。自信にあふれ、積極的に自分を売り込む人こそ輝いている、という考え方は、当時の日本の女の子たちにとって新鮮だったのは間違いない。お茶汲み・コピー取りからのキャリア形成、洋服やお化粧への投資、若さと美を保つためのダイエットとワークアウト、奔放なセックスライフ。遠い海の向こうの世界の話が、いつしか日本の社会にも、じわじわと浸透しはじめた。


一方の「10着しか持たない」のほうは、上記のようなアメリカ社会で育った女の子が、フランスでホームステイをして学んだ「シック」なライフスタイルを紹介する。こちらで大切にしているのは、身の丈にあった良質な暮らしだ。ここで奨励されている「シック」な暮らしは、驚くほど昭和の日本の生活ぶりに似ている。朝起きたらちゃんと着替えて朝食をとる、とか、ジムに行くかわりに家事で体を動かす、とか、ふだんの食事をきちんと手作りすることが大切、とか。まあ、母たちの世代からしたら、当たり前のことばかり。(立ったまま、あるいは、歩きながら物を食べない、と書かれていたのには正直、驚いた。)


そしてこの本が、いまの日本でベストセラーになっている、ということは、この提案がいまの日本の女の子たちにとっては新鮮だった、ってことなのだろう。本を読むこと、紙の新聞を読むことも奨励されている。ハリウッド映画ではなくてインディペンデント系の映画を観よう、美術館に行こう、という呼びかけもある。世間的な上昇志向より文化的な豊かさ。時代は案外、いい方向へ向かっているのかもしれない、と思ったり、なんとなく、物足りないような気持ちになったり。意外に複雑な心境なのだった。

2014年読了ベスト本

晦日の今日は、朝から近所のスーパーに買い物に行き、午前中はお掃除、午後はおせち作りと大忙し。でも、我が家は料理に関しては完全に2馬力なので、お重3つ分のお料理がわりと短時間でできあがった。あとは下ごしらえしたブリを焼くだけ。夕食は妹の旦那が贈ってくれた、鹿児島の旭蟹と福井の蕎麦。紅白を見るともなく眺め(同居人は一瞬だけ、ものすごく集中して観て)、平和に平凡に、2014年が暮れた。


さて、2014年の読了本。びっくりするほど数が少ない。考えてみると2014年は、自分にとって「事件」の多い年だった。まず、1月の入院・手術。4月の異動。入院中は「本を読むぞー」と意気込んでいたんだけど、予想以上に手術がおおごとで、とても本なんて読める状態じゃなかったという誤算。異動後は仕事内容も一緒に仕事をする社内外の人も一変したので、慣れるまでかなりドタバタした。ゆっくり好きな本を読むというより、英語の本も含め仕事で急いで読む本が増えた。でも、それはそれで悪くなかったな、と思う。これまで知らなかった世界に、ちょっとだけ触れることができたわけだから。


ということで、2014年の読了本は、いつもの年よりノンフィクションが多かったけど、やっぱり振り返って「いい本だった!」と思うのは、文学作品が中心。とくに今年は、オールタイムベスト10に入るんじゃないか、ってくらい好きだった本があって、これが2014年のベスト1。

ストーナー

ストーナー

「奇想天外」とか「大ロマン」とか、そういうのも悪くないけど、やっぱりわたしはこういう静かな小説が好きだ。「だめ男小説」とも言えるのかもしれない。ストーナーのような男を、だめ男と呼んでいいのかどうかわからないけれど、あまり要領がよくなくて、世間的な成功や財産に無縁な人生を送ったということでは、まあ、だめ男と呼んでもいいのだろう。もちろん、愛情を込めて。そして、1960年代に書かれたこの作品が、いま再評価されて、それが名翻訳家の目に留まり、彼の最後の翻訳作品として読者の手に届けられたという奇跡。


以下、順不同でフィクション2冊、ノンフィクション3冊。

低地 (Shinchosha CREST BOOKS)

低地 (Shinchosha CREST BOOKS)

バニヤンの木陰で

バニヤンの木陰で

信じない人のための〈宗教〉講義

信じない人のための〈宗教〉講義

九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響

九月、東京の路上で 1923年関東大震災ジェノサイドの残響

フィクションは、微妙にテイストの似た海外文学が揃ってしまった。一方、ノンフィクションはまったく違う分野、掘り下げていけばどこまでも深い分野を、とてもわかりやすく導いてくれる優れた入門書3冊。


それから、再読だけどさすがに面白かったのは、愚かな女が主人公の海外文学の古典2冊も挙げて、今年は読了本ベスト8、ということで。

チャタレー夫人の恋人 (光文社古典新訳文庫)

チャタレー夫人の恋人 (光文社古典新訳文庫)

ボヴァリー夫人 (河出文庫)

ボヴァリー夫人 (河出文庫)


来年の1冊めは、噂の日本文学全集『古事記」に挑戦しようかな。
ともあれ、今年はブログさぼりがちでしたが、時折のぞきにきてくださった方、コメントを書いてくださった方、ありがとうございます。来年も、ゆるゆるとこんなペースで、無理せず続けていこうと思います。
皆様、どうぞよいお年をお迎えください。