中国のことを考えた

テレビでは連日聖火リレーのことを報じていて食傷気味。
「中国って人気ないのね……わたしは結構好きなんだけど」と、何気なく言ったら、
同居人が、「この前買ってた中国の本、読んでみたら? タイムリーなんじゃない?」と言ったので、
ほお、たしかに、と思って、少し前にアマゾンで購入した、
麻生晴一郎『こころ熱く無骨でうざったい中国』を開いた。

こころ熱く武骨でうざったい中国

こころ熱く武骨でうざったい中国

ものすごくおもしろくて、あっという間に読了。


ちょっとディープなガイドブック風のものを想像して読み始めたのだけれど、
まったく違っていた。
この本はむしろ、私ノンフィクション、私小説、の様相を呈している。
冒頭、著者は20歳の頃に上海で美貌の中国人女性と同棲していたときのことを書く。
自分の戸惑いや、心の揺れ、それに、普通なら隠しておきたいような、ずるい部分や弱い部分まで、
さらけだすようにして書く。
ものすごい行動力・分析力と、びっくりするくらいピュアな感性が同居している感じだ。


上海の町と中国人女性との暮らしに疲れた彼は、ふらりとハルビンを訪れる。
とくに目的があったわけでもなく、「たんに日本にいた時から聞いたことがある地名」だったという程度の理由で、
宿泊先のメドもたたぬままにハルビンに行き、
外国人は泊めない宿に違法で宿泊し、そこでお金をとられて無一文になり、
仕方がないから不法就労をした、という……。
信じられないような話なのだけれど、この本の丁寧な記述を読んでいけば、これがマユツバでないことはよくわかる。


この本の中で繰り返し語られる、「こころ熱く無骨でうざったい」中国と中国人。
その分析は意外に冷静で、単なる「好ききらい」の話ではない。
あえて「好き」と「きらい」に分けたとしたら、もしかしたら「きらい」の記述のほうが多いかもしれない、と思うくらい、
批判的な目もある。
けれど結局のところ、この人はものすごーく深いところで中国を愛してるんだろうなあ、
「心熱く無骨でうざったい」人間関係を、大切に思っているんだろうなあ、と感じた。


放浪旅ネタということで、沢木耕太郎の『深夜特急』を思い出す人が多いかもしれないけれど、
わたしは『一瞬の夏』のほうを思い出した。あるいは、昔、この本と同じ出版社が出していた、
椎名誠の『さらば国分寺書店のオババ』を。(どちらも大好きな本だ。)

一瞬の夏 (上) (新潮文庫)

一瞬の夏 (上) (新潮文庫)

さらば国分寺書店のオババ (新潮文庫)

さらば国分寺書店のオババ (新潮文庫)


いま突然思い出した。以前、アメリカ人の書いた「中国本」をリーディングしたことがある。
もう、タイトルも何も覚えていないけれど、かなりディープな内容で、
日本ではあまり知られていないようなことまで書いてあって、
かなり高い評価をしたような記憶がある。
そういえば、わたしは中国に行ったこともなければ、とくに中国に詳しいわけでもないのに、
リーディングや翻訳で中国ネタの話があると、積極的に引き受けていた。
案外、この「こころ熱く無骨でうざったい」国と、縁があるのかもしれない。