ISBN出版者コードの取得。思い切って、37000円コースだ!

翻訳家の越前敏弥さんからメールの返事が来たのは、わたしがおそるおそるメールを送ってからわずか1時間後のことだった。越前さんと『オリンピア』とわたしの出会いの物語は、12月、1月に企画されているイベントのためにとっておくことにして、ここでは編集請負の仕事しかしていなかった北烏山編集室が、版元(出版社)として本を出すことになり、突然あふれかえった事務作業の実際について、なるべく詳しく記しておこうと思う。

 

ほかの「ひとり出版社」さんたちとわたしたちが異なることのひとつは(「ひとり」じゃなく「ふたり」だということのほかに)、出版活動をはじめるよりだいぶ前にすでに法人格を取得していた、ということだ。ほかの方たちの体験談を拝読すると、会社の登記やら引っ越しやら法人口座開設などなど、法人格取得のための事務仕事と同時進行で、これから書くISBN番号の取得や取次・流通の方法の決定、倉庫の問題などを考えなくてはならず、それに加えて当然ながら、本をつくる作業(原稿整理とかデザイン依頼とかイラスト発注とか、いろいろ……)も同時進行するわけで、しかも1人で!ということで、それは大変に決まっている。その点わたしたちは、なにしろ「ふたり」だし、法人格はもうできていて、本作りの作業はこれまでの経験をいかすことができるわけで、ほかの方たちにくらべるとだいぶ楽だったはず。それでも、本を一冊、ゼロから作って、しかるべきルートで書店に入り、読者の手に届くところまできっちりとミスなく遂行する、というのは、予想以上に大変だった(と、過去形になってるけど、現時点でまだ読者の手に届くところまでいってない!)

 

ともあれ、何はなくてもまずはISBNコード(および書籍JANコード)取得。今回バイブルのように何度も参考にさせてもらった書籍、宮後優子『ひとり出版社入門』にも、ISBN番号取得の手順が詳しく書かれている。『オリンピア』は翻訳書なので、まず原書の版権をとらなくてはならないが、版権交渉の際に国際コードであるISBNコードが必要になる可能性もあると考え、とにかく急いでISBN出版者記号を取得することにした。

 

ISBNコードは、13桁で構成される国際識別番号で、たとえば前職で編集担当した書籍、『世界文学大図鑑』のISBNコードは、978-4-385-16233-1。この385の部分が出版者の固有のコードで、16233-1が、その書籍単体のコードになる……というような知識は、もちろん前職で得ていたけれど、そこは会社人間の哀しいところ。当時はISBNコードの取得やらバーコード作成やらといった作業は別の部署の人たちが迅速にそつなくこなしてくれていた。でも今回は、自分でやらなくちゃいけない。

 

まず、日本図書コード管理センターのウェブサイトにいって、申請手続きを確認する。このウェブサイトはなかなかよくできているので、ここに書かれている手順をしっかりと読んで、そのとおりに進めていけば、まず失敗することはない。注意しなくてはいけないのは、ISBNコードと書籍JANコードというのは別々の組織が管理しているので、それぞれに申し込みと支払いをしなくてはいけない、ということくらいだろうか。(でもそのことも、上記の日本図書コード管理センターのウェブサイトにしっかりと書かれているので心配はいらない)

 

このときおもしろかったのは、ISBN出版者コードを取得する際の料金が、出版可能点数によって異なる、ということだ。シングルコードといって1点だけなら8000円、10点までの7桁コードなら20000円、100点までの6桁コードだと37000円だ。さあ、どうしよう。1点だけでおしまい、ということはないと思ったけれど、10点以上出す? もしかしたら3点くらい出したところでうまくゆかずすごすご撤退という可能性もあるよね……でも、20000円と20万円というならともかく、20000円と37000円。なかなか絶妙な料金設定なのだ。ここはやっぱり、志高く、100点刊行目指して、37000円コースだ! ということで、弊社は6桁コードを申請。しばらくしてから郵送でしずしずと送られてきた出版者記号は、911068 でした。これから先、出版社を続けるかぎり、ずっとおつきあいしていくわたしたちの固有の番号、911068。

 

法人登記のときもそうだったのだけれど、こういう事務作業というのは、難しくはないんだけどとにかく煩雑。このあと、『オリンピア』の書誌情報がかたまったタイミングで、2桁の書籍単体のコードを割り振って、ISBNコードが完成する。図書コード管理センターから送られてきた割り振り表の一番上は、01ではなくて、00。こうして、『オリンピア』のISBNコードが決まった。これから先、奥付やスリップ、ウェブサイトなど、あらゆるところで、この番号を記入・入力することになる。

 

日本図書コードセンターのウェブサイトには、手続き完了まで2週間程度かかる、と書かれている。申請をするとまもなく、図書コードセンターの人から電話がかかってくる。内容確認のため、と書いてあるけど、なんだか人物審査をされているようで、緊張した。でもセンターの人は、実際はとてもやさしく感じよくて、心配は無用だった。時期にもよるのかもしれないが、弊社の場合は登録完了まで、1週間もかからなかったような気がする。

 

さて、次なる業務は版権取得だ。著作権エージェントを介した版権交渉は、前職でも何回もやっていたので、作業としてはあまり不安はなかった。でも、今回の場合、「版権とれたらいいな」というレベルではなく、何がなんでも取得しなくてはいけない。越前さんをがっかりさせるような結果にならないように、即席出版社としては全力を尽くす必要があった。

 

だいぶ疲れてきたので、今日はここまで。おやすみなさい!