初心にかえってブログ更新

またしても長くあいてしまった。
お役所の決めた日程の関係で2週間遅れで進行していた後輩の本のヘルプ、お役所向け書類の作成と、いっこうに暇になることなく、相変わらず午前様の日が続いた。けど、今度こそ、ほんとうに一段落。ここ数日は比較的のんびり過ごした。


春の人事異動とその余波に対して、自分に何ができるのかよくわからず、なんとなくぞわぞわしている。結局、弱い立場の人たちにしわ寄せがきていて、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。ぐちゃぐちゃ言ってても何も変わらないので、とにかく営業活動をがんばって目に見える成果を出すしかない。


結構前に沼野本読了したんだけど、上記のこともあってなんとなく心落ち着かず、ブログ更新をさぼっていた。とてもおもしろかったのでちゃんと感想を書こう、なんて思っていると、ずるずると書かずに日がすぎてしまって、ますます書きづらくなる、という悪循環。なので、ここは初心にかえって、簡単でもいいからこまめにブログを更新することにする。(というような文章を書いたのは、これで何度目だろうか…)


世界は文学でできている 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義

世界は文学でできている 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義

読了! いろいろな面で、沼野先生の魅力が爆発している本だった。
話し相手は作家だったり各国文学の研究者だったりと、その道のプロばかりで、内容は専門的になってもおかしくないし、実際に専門家が読んでもそれなりにへえ、と思う内容の濃さなんだけど、普通の文学好きが読んで、十分におもしろく読めるように工夫されている。そりゃそうだよね、もともとは中高生のために、という企画なんだから。(ただし、高校生ならともかく、中学生には理解できないことはないにしてもあまりおもしろくないのではないかと思う。高校生でも普通の子にはちょっと厳しいかな。沼野先生たちの時代の高校生とはだいぶ違うから。)
で、結果的に中高年が多かった、というのはとてもうなずける話で、若い時に体力まかせで乱読したことが、中高年になるとじわじわと自分の血となり肉となり、沼野先生たちのお話がしっかりと頭に入ってくる、うんうん、そうなの、そうなのよ、という感じになる、というわけだ。


会社にアルバイトできてくれている、今春大学を卒業したばかりという青年が、この本に登場する先生の教え子だというのでこの本がを貸してみた。「すごくおもしろかったです。とくに翻訳の話のところが。ぼく、学生のときからすごく翻訳に興味があって、卒業したらもう離れちゃうんだなと思うと、寂しいような気がします」とのたまわった。おお! 彼はいまどき珍しい、英文科出身なのだ。
ともかく、彼に貸していたために沼野本が手元になく、読了してから日が経ってしまったこともあってあまり内容にふみこんだ感想が書けないが、まあ、これくらいで。


昨日はフリーランスの編集者である友人に誘われて、作家・翻訳家の田中真知さんのトークイベントに行ってきた。30人も入れば満員の小さな会場だったけれど、これが予想以上におもしろくて、「行ってよかった」と思った。前半は田中さんによるなんとかという不思議な楽器の演奏。最初、アフリカの民族音楽かと思ったんだけど、田中さんの説明によると、2000年代にアメリカで発案されてネットで販売されている楽器で、楽譜も弾き方も何もわからないので、田中さんが自分で考えて、いろいろ工夫して音色をかえたりして、気分が落ち込んでるときに自分を慰めるためにさわっているうちに、しだいに「演奏」っぽくなっていったのだという。最初のこの楽器にまつわる話を聞いただけで、わたしはすっかり田中さんのファンになってしまい、例によって前のめりになって耳を傾けているうちに、話は本題のコンゴ、ザイール河を奥様と二人で丸木舟で旅をしたときの体験談へ。1991年の旅というから、田中さんも奥様(すごい美人!)も若くてこわいもの知らずで、全体としてみれば大冒険譚、のはずなんだけど、田中さんの話しぶりはなんともいえずユーモラスで温かくて、どんな大自然の中を旅していても、彼らが見つめていたのはそこに住む人々と生活なんだな、ということが伝わってきて、ますますファンになってしまった。さすがにわたしの年齢では、同じことをやってみたい、とは思わなかったけれど、田中さんや誘ってくれた友人やその会場にあふれていた「フリーランス」な生き方にもう一度戻れたら、と思わず妄想してしまった。それはそれで、いろいろな苦労があるのはわかってるんだけどね。


今日はすごく久しぶりに同居人と近所を散歩した。初めての店でケーキを買い、ちょっと肌寒かったけど、新緑をながめながら歩いた。近くのお寺の池には亀や鴨がいて、大学のテニスコートでは女子大生がソフトテニスをしていて(これがめちゃくちゃうまいのだ。惚れ惚れするようなトップ打ち!)、あらためて、やっぱりここ半年くらいの働き方は、非人間的だったな、と思う。


おとといくらいから、阿部先生の「小説的思考のすすめ」を読み始めた。最初の3章くらいしか読んでいないが、これはすごい本だ。小説を読むことの楽しさを、学校的な説教くささや思いいれたっぷりの感傷を徹底的に排除して、小憎らしいくらいクールに鮮やかに説明していく。でも、鮮やかであれば鮮やかであるほど、その手さばきに「ちぇっ」と思う人もいるだろう。なるべく先入観を持たずにこの本を読んでいくと、この一見クールな小説論が、実は愚かなまでに情熱的な小説への愛に裏打ちされているように思えてきた。そのあたりも含め、詳しい感想は読了後に書くことにしよう。