ものを書く人になれると言われた

今日は午前中に、単行本の著者である児童文学作家に電話した。
このブログで「プレミアムフローズントロピカル」のエピソードをご紹介した、彼女である。
あの後、体調をくずされたとうかがい、お願いしているお仕事の締め切りを遅らせたりしたのだけれど、
思いのほか早く、お仕事を仕上げてくださったので、そのお礼の電話をしたのだ。
彼女と電話で話すのは、あの日、小田原駅で別れて以来だった。


「もしもし」と言うなり、
「あー、あなたと話がしたいとずっと思っていたの!」
と言われた。聞けば、言い忘れたことがあった、どうしても言っておきたいことがあって、気になっていたのだ、という。
「あのね、あなたは、ものを書く人になれると思うの」と彼女は言った。
えーっ!と思い、感動もして、ちょっと泣きそうになった。
尊敬する作家さんに、そんなことを言われるなんて、ほんとうに、感涙ものである。
あの日、わたしは彼女といろいろな話をしたのだけれど、その会話の途中で、
「わたしは子どもの頃、作家になりたかったんです」という話をした。
「でも、着想がないから、オリジナルは書けないと思って、それで翻訳を……」と。
今日の電話で彼女が言っているのは、そのときのことだった。


うれしかったのは、彼女がそう思った根拠として、
「あなたは前に、自分は人間に対してしつこくて、この人!と思うと相手がびっくりするくらいいれこむって言ってたでしょう。
 そのときに、ああ、この人はものを書く人になれるなあと思った」と言ったこと。
小説(物語)を書くということの大変さを、わかりすぎるほどわかっているはずの彼女が、
「どうしても言っておきたいこと」として、その言葉をくれたということが、
別に今から作家をめざすとかそういうことじゃなくて、
なんていうのかな、自分を、というか、今自分がやっていることや大切にしていることを、
ものすごく大きなスケールで肯定してもらったような感じがして、うれしかったのだ。


午後は編集会議。
今は著者と話すのも、編集部内で議論するのも、ただ、楽しい。
編集部のチーム内の雰囲気もよくて、みんなお互いに協力的ではりきっているから、
今日は会議開始の1時間前には、会場設営から資料準備まで、ほぼできあがってしまった。
これから先、忙しくなってくると、お互いにピリピリして、そんなに「仲良し」ではいられないかもしれないけれど、
できることならこの雰囲気を持続して、気持ちよく会社生活を送りたいものだ。


会議後の懇親会では、村上春樹小川洋子などの現代作家のことを話す。
読んでいない作品が話題になったりすると、ちょっと悔しいような気持ちになる。
これからまた、せっせと短篇を読みあさることになるのだろう。
そういうときって反動のように、大長編小説が読みたくなるんだよね。
今、鞄に入っている携帯本は、だいぶ前に買った、ウィリアム・トレヴァー『密会』。
大人の小説を読みたい気分なので。

密会 (新潮クレスト・ブックス)

密会 (新潮クレスト・ブックス)