会社と適切な距離を
ワークライフシナジー―生活と仕事の“相互作用”が変える企業社会
- 作者: 大沢真知子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/03/27
- メディア: 単行本
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後半、引用が多くなるのが気になったけれど、
全体としてはとてもおもしろかった。
これだけデータや参考文献を駆使して書いているのに、
冷たい感じがしなくて、今のわたしの悩みに直球でこたえてくれている感じだ。
「ワークライフバランス」の面で成功している企業の例なども豊富にあがっていて、
おー、そうか、そうかと思いながら読んだ。
ワーカホリックのひとが抱える問題は、会社とのあいだに「心理的な契約」を結んでしまいがちで、
ノルマが達成できなかったり、重大な仕事上のミスがみつかったりしたときに、
心理的なダメージを受けやすいことにある。
重要なのは、「会社と適切な距離」を取ることができる(自己管理)能力であり、
長期にわたって、自分の能力を向上させていくためには、
会社からの過剰な期待や要求に対してノーと言える力を養っていくことが大切になる。
(184ページ)
この箇所を読んで、去年の秋に会社を辞めていった、きわめて有能な仲間のことを思いだした。
文章にしてしまえば簡単なことだけれど、こういう自己管理というのは、相当難しい。
この大沢さんの本に共感できるのは、大沢さんが自分自身、上記のようなワーカホリックの傾向にあること、
今も完全にワークライフバランスがとれているとはとても言えない状態であることを、明らかにしているからかもしれない。
というのは、職場では常に、上のようなケースでわたしが「ノー」と言ったとき、
必ず近くにいるだれかに、それも多くの場合、自分以上に過剰な期待や要求を抱えているだれかに、
わたしが「ノー」と言ったために生じた仕事が、おおいかぶさっていくことは自明なのだ。
大沢さんはそのことの痛みをわかったうえで、あえて「ノーといえる力を養え」と言っている。
なんだか組合運動みたいになってしまうけれど、
この「ノー」はみんなで言わなくちゃだめなんだな。
わたしが定時で帰ることが、周囲の人たちにとってもプラスになるような自己管理をしなくちゃいけない。
会社の期待を意気に感じてがんばりすぎてしまったり、
がんばっている仲間をフォローしようとしてさらにいっしょにがんばってしまったり、と、
これじゃ堂々めぐりだ。
「ハードワークより仕事の効率」(35ページ)なんてことばを、「お前には言われたくないね」という相手はたくさんいるけれど、
大沢さんのことばとして真摯に受けとめて、
なるべく周囲をまきこんで(自分ひとりで効率アップを目指すのではなく)実行にうつしていきたいものだ。
ちなみに、この本のもっとも好感がもてるところの一つに、
「ワークライフバランス」を、「女性が仕事と家庭をうまく両立させるには」という視点には立たずにとらえている、ということがある。
「シナジー(相乗効果)」ということばが明らかにするように、労働時間を短縮することが、仕事の質のアップにつながるのだという。
土曜日に講演会にも運動会にも(←しつこい!)行かずにアロママッサージに行ったり、
仕事が残っているのに定時に退社して着付教室に行ったりということが、実は長い目で仕事にとっても会社にとってもプラスになると考えたら、
なんだか会社生活が楽しく思えてくるではないか。
うーん、世の中、そんなにうまいこと運ぶものだろうか……
(でも、今日会社の後輩から、「今日は表情がやわらかいですね」と言われた。「アロマの効果かなあ〜?」とふざけたけれど、
ほんとうにそうかも。それにしても、いつもはわたし、そんなに表情がかたいんだろうか……ちょっとショックだ)
明日はちょっと気の重い会議があるけれど、夕方から、知人の出版記念パーティがある。
はじめて会う人ばかりの会だから、少し緊張するけれど、どんな出会いがあるか、楽しみだ。