モンキービジネス

現在担当している仕事の「コンセプト」とやらにいまひとつ乗り切れないままに、
「ターゲット」としている読者にとって「楽しく、ためになる」本づくりをすべく、
気づけば残業、残業の日々。
そんな中、本日創刊の新文芸誌「モンキービジネス」を購入した。

モンキー ビジネス2008 Spring vol.1 野球号

モンキー ビジネス2008 Spring vol.1 野球号

巻頭の「モンキービジネス宣言(の・ようなもの)」を読み、中盤あたりにさしかかって、
思わず、「ううう……」と声をもらす。


  我々には、ある一定の「コンセプト」に基づいて
  特定の世代なり層なりを「ターゲット」にする気もなければ、
  それらの世代なり層なりをあいてにいかなる新たな「ライフスタイル」を提示する気もないし、
  もちろん「役に立つオススメ情報」なんかは薬にしたくてもないであろうことは約束できる。
  あるいはまた、忙しい毎日からの爽やかな息抜きの場を作ろう、なんていう殊勝な精神なども、
  これっぽっちも持ちあわせていないことは断言できる。



こんなことを「断言」してゆるされるのは、柴田元幸だからでしょ〜と最初思ったけれど、
よく考えてみたら、これはこの雑誌が「文芸誌」だからなのかも、と思い直した。
この雑誌、何部刷っているのか知らないけれど、少なくとも今日の吉祥寺の書店での扱いは、
予想以上に「ひっそりとした」ものだった。
同じように今日、リトルモアから創刊された雑誌のほうが、
かなり大々的に宣伝をして、あちこちの棚で平積みになっていた。
だいたい文学で大きく儲けられるはずもなく、
だから柴田さんのスタンスも、「コンセプト」をバーンと出したり、
新しいことや役に立つことをやろうなんて気はありませんよ、
ただ自分がおもしろいと思うことを、みんなで持ち寄っておもしろがりましょうよ、というくらいの、
まさに「文学」的なスタンスなんだなあと思う。
「文学」は、売れることをねらってつくるものじゃなくて、
おもしろがってつくったら、あ、これ、たまたま売れちゃったよ、ってなものなんじゃないかと。


そういえば先日、子どもの本の読書会の課題図書3冊がアマゾンから届いたのだけれど、
封を切って驚いた。
たまたまなのだろうけれど、3冊とも全部、表紙が漫画だったのだ。
いまはこういうふうにしないと売れないのね〜
子ども(様)が手にとってくれない(くださらない)のね〜
わたしはとにかく漫画とゲームに縁がないので、
子ども(様)にアピールするような「売れる」本は、とてもつくれないな、と再確認。


あれこれと迷いながら書店をうろつき、翻訳家の辻由美さんの新刊『読書教育』を手にとる。

読書教育―フランスの活気ある現場から

読書教育―フランスの活気ある現場から

帯に、「なぜ本でこんなに熱くなれるの? 学校も書店も図書館も活性化したイベントに取り組む人たちの熱気を、
『図書館で遊ぼう』の著者が生き生きと伝えるエッセー。」とある。
現在の仕事について、ぶちぶち言っているくせに、
やっぱり仕事関係の本が気になってしまうのだ。
もしかしたらこのあたりに、自分が今の仕事をやる気になれるヒントがあるのかも、とすがるような気持ちで、
2400円のこの本を買う。



帰り道のコンビニで、女性誌marisol」を買う。
「モンキービジネス」『読書教育』「marisol」の3冊を並べて、
あっちを読んだり、こっちを読んだりしてぼんやり過ごす。
明らかに仕事のストレスがたまっているときの本の買い方。
でもたまには、こんなふうに過ごすのもいいだろう。
がんばりすぎて爆発するのが、わたしの悪い癖だから。


……おっと、「モンキービジネス」はまだ途中までしか読んでいないので、感想は後日。
とりあえず、冒頭の対談はおもしろかったけれど、巨人ファンのわたしとしてはちょっと異論あり。
あと、シェリー・ジャクソンの「血」は、わたしはいまひとつ肌があわなかった。
こういう小説が好きな人もたくさんいるんだろうけど。