古典新訳文庫『秘密の花園』

秘密の花園 (光文社古典新訳文庫)

秘密の花園 (光文社古典新訳文庫)

読了。
ずっと滞っていた「古典新訳文庫」にやっと戻ってきた。
うーん、やっぱりこのシリーズは、いい。
いい理由はいろいろあるのだけれど、そのうちのひとつが、
この『秘密の花園』のような児童文学の名作が、ぽつんぽつんと息抜きのように入っている、ということ。
みんながみんなわたしのように、刊行順に読破していっているわけではないのだろうけれど、
「翻訳もの+古典」という構えに対して、だいぶ敷居を下げてもらっている感じ。


この作品は、もちろん小学生の頃に読んだ。
そしてもちろん、作者バーネットによる名作「小公女」「小公子」も読んだ。
好きだった順序としては、「小公女」「小公子」「秘密の花園」の順かな。
でも、改めて読み返してみると、いやあなかなか、よくできた物語なのだ。
なんといっても、主人公のメアリが魅力的。「小公女」のセーラや、「小公子」のセドリックが、
容姿に恵まれた天使のような子どもであるのに対して、
物語の最初の時点でのメアリときたら、「つむじまがり」で「偏屈」で「無愛想」で「不細工」と、ひどい言われよう。
もちろん、それが「花園」と出会って変わっていく、というストーリーをひきたてるためにそのような設定になっているのだけれど、
それにしてもまあ、まったくもってかわいくない。あんまりかわいくないから、逆にかわいくなってしまうくらいだ。
で、メアリがすこうし、いい子になってきたかなあと思い始めるころ、
さらに強力なわがまま坊主、コリンが登場。
この、徹底的にかわいくない二人のガキに、周囲の大人がふりまわされてオロオロするのが痛快だし、
結局、二人が自分たち子どもだけの力で、最初に持っていたマイナスポイントを克服していくというところが、
いかにも児童文学といえばそうなのだが、心地よい。


土屋京子さんの翻訳も読みやすかった。
土屋さんはノンフィクション中心の方だと思っていたのでちょっと意外だったけれども、
いかにも「児童文学でござい」という甘ったるい訳ではなくて、淡々としていて、
それがこの作品にあっていたと思う。
ただ、あとがきにあるように、ヨークシャーなまりはずいぶん苦労しているようで、
時々、ちょっとやりすぎなんじゃないかなあ、と思うところがあった。
(でも、そのヨークシャーなまりがおかしいって言って笑う場面だったりするので、
わざと不自然にしているのだと思う……うーん、そのへんの塩梅がむずかしいんだろうなあ……)


仕事の関係で、ここのところどっぷりと児童文学の世界に浸っている。
来週の木曜日に行く予定の読書会の課題図書が3冊、未読のまま机の上に置いてある。
今日からがんばって読まねば。
(ただ、ちょっとした事情で、この3冊についての感想は控えます……)