の仕事

1964年生まれの著者が、同世代の<ことば>の仕事に携わる人々の話を聞いてまとめたインタビュー集。

“ことば”の仕事

“ことば”の仕事

OLや専業主婦を経て、中学校の国語教師、翻訳業、編集業と、
細々と「ことばの仕事」にかかわっている1964年生まれとしては、
「読まずにはいられない」本だった。
共訳ながら翻訳書を出したこともある原書房さんが版元だし、登場するインタビュイーの中には、仕事上でかるーくかすっている人も何人か。
読みながらやっぱり考えたのは、1960年代前半に生まれた、私たちの世代、について。


大学卒業以来ずっと編集の仕事をしている同居人には、「あなたは世代の話が好きだね」とあきれられるが、
長くフリーターのような生活をしていて、最近になって会社員になり、さまざまな世代の人といっしょに仕事をするようになると、
このことを考えずにはいられない。


いわゆる昔ながらの出版文化をよしとして、教養や知性を重んじてきた上の世代と、
物心ついたときには携帯、パソコンがあり、ネットで自ら発信することに躊躇のない下の世代との間で、
価値観をどちらとも共有できるような、どちらも違うような気がして、揺れている。


「それは世代の問題ではなくて、自分がどう思うか、でしょ」
と批判されてしまうとぐうの音もでないのだけれど、
仕事上、さらに次の世代にどんな「ことば」を投げかけていくのか、ということを考えなくてはいけなくなって、
あー、今、自分が選んでいる「ことばの仕事」とのかかわり方は、これでいいのだろうか、などと、
考え込んでしまったのでした。


昨日読了したのはもう1冊。

ミーナの行進

ミーナの行進

ベストセラーになった『博士の愛した公式』もよかったけれど、
短編集『まぶた』がとてもよくて、とくにその中の
「バックストローク」「飛行機で眠るのは難しい」がよかった。
『ミーナの行進』は、読みやすくて心あたたまるお話だったけれど、
読後感はさらっとしているというか、ほかの小川洋子作品にくらべると、
ちょっと迫力に欠けるかな。でももちろん、こういう作品もあっていいと思うけれど。

まぶた (新潮文庫)

まぶた (新潮文庫)