老眼鏡をつくった

ここのところ、夜、蛍光灯のもとで本を読むのがつらくなった。
昼間でも、テレビの番組表などの小さい文字がよく見えない。
何より困るのは、仕事で校正をしていても、「パンプキン」が「バンブキン」となっていても、
見逃してしまう、ということだ。
これでは職業上差し障りがある、ということで、
同じ悩みを抱える同居人といっしょに、自転車で近所の眼鏡やさんに出かけた。


数ヶ月前に同居人がこの店で時計を買ったとき、その対応の良さが記憶に残っていたので、
「老眼鏡を買うときはここに来よう」とひそかに決めていた。
わたしはコンタクトレンズなので、老眼専用の眼鏡をつくることにしたのだが、
いやあ、眼鏡ってフレームもレンズも、ほんとうに「ピンキリ」なのね〜。
あれこれ迷った末に、納得のいくお買い物ができたのだけれど、
とにかく感心したのは、この店の従業員の知識の豊かさ、サービスの良さだ。
最初に応対してくれた若い女性は、たいへん明るくて感じが良かったのだけれど、
こちらがいろいろ質問すると、わりとすぐに「えっと……」となってしまい、明らかに知識と経験が足りない感じ。
でも、「ちょっとお待ちください」とすぐに先輩に聞きに行き、
先輩がやってきて、きちんと説明をしてくれた。
こういうときによくありがちな、質問を繰り返す必要もなく、
新人さんが担当したことでのストレスはほとんどない。
聞けば入社一ヶ月とのこと。そのわりにはよく知っているし、変に知ったかぶりをすることもなく、
誠実に対応してくれることがよくわかる。
そのあとをひきとって検査やレンズの説明をしてくれた男性の方も、
同居人が担当してもらった年配の店員さんも、
全員、そろいもそろって感じがよく、対応がいいのだ。


仕事は、こうでなくちゃいけない、と思った。
昨日、「アド街」を観ていたら、街で評判の電機店、というのが出てきて、
その店もやはり、一人一人の顧客を大切にして、アフターサービスに力を入れている、という話だった。
大量生産・大量消費で価格を下げて、広告をばんばん打って、という商売の仕方もあるのだろうけれど、
小規模なところは小規模なところなりに、がんばり方っていうのがあるのだなーと思う。
「お客様との出会いを大切に」みたいなことは、キャッチフレーズとしてはよく聞くことだし、
大切にしなくてもいいや! と思ってる人や組織なんて、まずないだろうとは思うけれど、
こんなふうにきちんと実践している例に出会うと、
ああ、自分もいっしょに仕事をした人に、こんな印象を与えられるような仕事をしなくちゃいけないなーと思った。


昨日は定期購読している文芸誌3冊がまとめて届いた。
いつものようにつまみ読み。
「文学界」新人賞受賞作は、「ぽっちゃり専門」のデリヘル嬢の話で、結構おもしろかった。
「新潮」の角田光代の連載は、だんだん私好みの展開になりつつある。
文芸誌を複数読んでいると、同じ本の書評をいくつも読むことになるが、
これが案外、書評者の個性が出ておもしろい。
そろそろ文芸誌の定期購読期間が切れるので、来年も継続するかどうか考え中。
仕事にはまったく役に立たないということがわかったが、
月に一度、雑誌が届くとそれなりに気分がうきうきするのは間違いないので、
「応援」の意味もこめて、もうしばらく継続してみようかな。