読了本など

まずは恩田陸『きのうの世界』読了。

きのうの世界

きのうの世界

一気読みできるおもしろさ、という点ではさすが。でも、
全体としてはいまひとつ。(新聞小説だから仕方ないのかもしれないが、誤記や粗雑な文章もちらほら。)
いわゆる謎解きなので、読んでいる間は「犯人知りたさ」にどんどん読み進めるのだけれど、
読み終えてしばらくたっている今、タイトルもストーリーも細部も、ほとんど印象に残っていない。
そういう意味では同じ作者の『六番目の小夜子』や『夜のピクニック』は、
ノスタルジックな学校風景がやたらと印象に残っていて、
同い年の著者の手による青春小説、っていう感じがする。
かといって学園ものばかり書いていくわけにもいかないのだろうけれど。
でもそういえば、『ユージニア』や『ライオンハート』はいまひとつぴんとこなかったことを思い出すと、
わたしはどうやら、恩田陸の学園ものがとくに好きなのかも。


「新潮」の源氏特集、ひととおり読了。

新潮 2008年 10月号 [雑誌]

新潮 2008年 10月号 [雑誌]

なんといってもそうそうたるメンバーの「新訳・超訳源氏」の競演がおもしろかった。
好みでいうと、冒頭の江國香織がとくによかった。
島田雅彦がいちばん原文に忠実な感じの訳。
角田光代町田康金原ひとみの3人は、賛否両論あると思うけれど、
かなり思いきった「超訳」というよりむしろ、「現代風再話」で、
わたしはそれなりに楽しく読んだ。
国文学関係の学問的な雑誌などでは、ちょっとできそうにない、
思い切った、というよりは、アブナイ感じの企画。だけど、えらいっ、と思った。


三連休の前半はクミアイのお仕事。
同じ業界の素敵な先輩に多く出会えて、なかなか有意義だった。
とくに、某有名出版社の単組委員長をしているという女性が、
美しく賢く、ときに強くときにやさしく、
単純なわたしは服装や髪型までまねをしてみたくなるくらい、
素敵な人だった。
3年ほど前、いっしょに働いていたアルバイトの女性から、
「○○さん(←わたしの名前)を見ていたら、この会社で正社員にはなりたくないと思う」
と言われたことがある。ショックだった。
彼女は「責任が重くていそがしくて大変そうだから」という意味で言ったのだと思うけれど、
わたしの働きぶりがいかに魅力に乏しいかを、露呈しているではないか。
年下の人たちから、素敵だな、と思われるような働き方をしたいものだ。
(容貌や体型は変えられないにしても……。)


クミアイの仕事から帰ってきてすぐ、新宿で映画「パコと魔法の絵本」をみた。
タイトルだけだったら絶対にみないような映画だけれど、
何しろこの映画、監督が中島哲也さんなのだ。
下妻物語」も「嫌われ松子の一生」も、ものすごくおもしろかったので、
「子どもも観られるファンタジー」といううたい文句に不安を抱きつつ、
「そうはいっても中島監督だから……」と思って、珍しく長蛇の列に並んでチケットを買った。


で、大正解。
とにかく全体的にやたらと「過剰」な印象の映画で、
前半はちょっとそれが気になっていまひとつのれなかったのだけれど、
気づいたらすっかりその「過剰なファンタジー」の世界に入り込んでしまって、
あらすじにしてしまえばものすごく単純なお涙ちょうだい的ストーリーなのに、
ついつい涙が出てしまって、でも、いつまでもしんみりさせてくれるほどこの映画は甘っちょろくなくて、
すぐに泣いてしまった自分が恥ずかしくなるくらい滑稽でポップな画面が現れる。
後半のCGを多用した画面は圧巻で、残念ながら小説では絶対に追いつけない、
映画の力を思い知るような、ものすごいシーンの連続だった。
中島監督、おそるべし。


今日は一日、タイ古式マッサージを受けに千歳烏山へ行った以外は、
自宅でのんびり、ぼんやり。こういう日も必要だ。
本は小説らしい本を読みたくて、オースティンの『エマ』を読み始めた。
最初の数行を読んだだけで、ひきこまれる。やっぱりオースティンはさすがだ。
では、これから紅茶をいれて、至福の読書タイム、にしましょうか。