年末に

今日、我が家の住人が増えた。「くまこ」という。
ダンボールから出てきたばかりのときは、うつろな目をしてほとんど表情がなかったのだけれど、
しばらく話しかけてたりいっしょに遊んだりしているうちに、少しずつ表情がでてきた。
いまのところはまだ、おとなしくしているようだけれども、そのうち性格もわかってくることだろう。


この年末はとにかく忘年会が多かった。
懐かしい人と久しぶりに顔をあわせたり、毎日会っている人とあらたまって同席したり。
そんな中で今年は、ただ一人の同期(同日)入社の男性が今年いっぱいで会社を辞めるということもあって、
この先の「社会人としての残り時間」について、あらためて考える機会が多くあったように思う。


今年はじめてよかったことの一つが、
子どもの本の読書会に行き始めたこと。
前にもブログに書いたけれども、児童書の世界はほんとうに奥が深くて、
メンバーの知識の量の多さ、質の高さに、いつも驚かされる。
翻訳ものが課題図書になることも多くて、プロの翻訳家の人たちの鋭い意見を聞くにつけ、感心することしきり。
教科書の仕事の助けになればと参加しはじめた会なのだけれど、
ほとんど個人的な興味で参加を続けているような気がする。
この会は、来年以降もがんばってつづけていきたい。


そうはいっても、わたしが突然、「子ども好き」になったり、「教育」に燃え上がったりしているかというと、
そういうわけではまったくない。
この前の連休に、塩原温泉で入った「スープやきそば」の店で、幼い子どもをつれたお父さんが子どものために麺を細かく切っているのを見かけたとき、
なんとなく、ああ、子ども関係の仕事は、わたしにはやっぱり無理かもしれない、と思ったのだ。
職場で毎日のように連呼される「子どもたちのために」「子どもたちの目線で」「子どもたちの現実をみつめて」ということばに対する違和感というか、劣等感というか、
うーん、うまくいえないのだけれど、思わず下を向いて「ごめんなさい」といいたくなるような感覚、は、
どうにも解決しがたい壁のようにも思える。


今年はじめようとして続かなかったのが、地元のソフトテニス
土日に仕事が入ることが多かったり、たまにオフでもつい、家でだらだらしてしまったり。
健康維持とダイエットのために、定期的な運動は欠かせないと思うので、
来年は、今月に入ってからはじめた、早起き&ジョギング(または自転車こぎ)を、
同居人にいかに小ばかにされようと、休み休みでも続けようと思う。


そのほか、来年も続けようとしていることは、
古典新訳文庫の読破。ブログの更新。お弁当づくり。
来年あらたにはじめようとしていることは、
英語の本を月1冊読むこと――じつに5年ぶりに、リーディングをやってみようかという無謀な試み。
子どもの本の仕事、教育教科書の仕事からの逃避行動かと言われれば返すことばもないけれども、
この5年で地に落ちてしまった英語力を、ある程度までは挽回しておきたいというのが正直なところ。


今日は美容院へ。帰りに吉祥寺エキナカの書店で、
いつも読んでいるブログで紹介されていた、アーサー・ビナードの本を買う。

日本の名詩、英語でおどる

日本の名詩、英語でおどる

駅ビルの中でお粥の夕食をとりながらひととおり目を通し、
帰宅してから英訳のほうをいくつか、声にだして読んでみる。
(今日は同居人が忘年会でいないので、安心して「音読」できるのだ!)


たとえば萩原朔太郎の「静物」。
4行の短い詩の後半2行、
「この器物(うつは)の白き瞳(め)にうつる
 窓ぎはのみどりはつめたし。」を、


The white eye of that bowl reflects
the rich green outside the window. Coldly. (11ページ)


と訳している。最後の、ピリオド、Coldly ピリオド、っていうの、かっこいいなあ、と思ったり、別の詩で、


I cry fo you, Brother,
don't you dare lay down your life.
You, the youngest child in our family,
thus cherished all the more--
Mother and Father didn't educate you
to wield weapons and to murder;they didn't
bring you up, to the age of twenty-four,
so that you could kill, or be killed yourself.  (77ページ)


っていうのを読んで、泣きそうになったり。これは、twenty-four の出てくるタイミングが絶妙、と思う。


国語教科書でもおなじみ、中原中也の「サーカス」も載っていて、
やっぱり気になるのはあの、「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」を、どう英語にするのか、ということ。
著者はあとがき風の解説で、「ぼくは試行錯誤を繰り返し、幾夜も苦しんだ」と書いている。
で、結局、どうしたか。うーん、なるほど。そうきたか。
せっかくなので、ここでは書かない。興味のある方は、どうぞ本書を買って、読んでみてください。