2冊読了

ちょっと事情があって本を読む時間がとれずにいたのだけれど、連休に入って少し心も落ち着いて、
古本屋やら新刊書店やらに行ったらやたらと本を買いたくなり、読める保証もないのに結構あれこれ買い込んでしまった。
同居人の母校がある町、土浦に、大規模な古書店ができたと聞いて(はじめたばかりのツイッターで知ったのだ)、早速行ってみた。かなり風情のある天ぷらやさんでかなりボリュームのある昼食を平らげ、亀城公園という趣のある公園を散歩してから、くだんの古書店に足を運んだ。


入ってみた印象は、「古書市みたい」ということ。全体の品揃えはもちろん、某大型中古書店とは一線を画して、それぞれこだわりのある本を並べているな、と思った。ただ、人文関係の本は多いけれど、文学ものはあまりないかな、という感じ。
もともとわたしはあまり古本屋に行くという習慣がなく、わたしの本棚には古本屋で買った本はあまりない。でも、今日はせっかく土浦まで来たのだから、という気持ちと、地方の古本屋さんにがんばってほしい、という気持ちから、別に珍しい本ではないけれど、2冊購入した。


1冊は、新潮世界詩人全集4『キーツシェリー・ワーズワス詩集』。翻訳はそれぞれ、安藤一郎、星谷剛一、加納秀夫。
初版が1969年、手元の本は1979年発行の八刷りで、とてもきれいな箱入り。1979年に1200円の値段がついている。
これが200円。大学の授業で、わたしはキーツのBright Starという詩をあてられ、はりきって訳して発表したのだけれど、先生から「あなたのキーツは元気が良すぎますね」と言われて悔しかったのをよく覚えている。この作品はキーツが病気で相当弱っているときに書いたものなのに、わたしの訳は、いままさに恋愛が始まったばかりでもあるかのように、「〜したい」「〜でありたい」と未来への希望に満ちあふれているように聞こえる、と先生は言った。そして、正確なことばは忘れたけれど、あなたはまだ若いから仕方ないのかもしれない、というようなことを言ったのだった。二十歳そこそこのわたしは、ちぇっ、と思った。若いからわからないとか言われたくない、という気持ちだったのだろう。でも、40代も半ばをすぎたいま、安藤一郎先生の翻訳によるキーツの詩を読み返してみると、先生がいわんとしたことが少しはわかるような気がする。「〜したい」「〜でありたい」と願いながら、そこにある種の諦めが含まれるなんて、若いころのわたしは考えもしなかった。

もう1冊は、早川書房の「現代詩人論」シリーズ、大橋健三郎編『ウィリアム・フォークナー』。1973年の刊行で1600円。これが、700円。じつはこの本を買ったのは、こういう本を早川書房が出していた、ということに感動したからだ。大橋健三郎の解説が20ページほど、その後、海外の論文の翻訳が11本、巻末には年譜、書誌、索引がちゃんとついている。こういう本が、ちゃんと商業出版社から出ていた時代があった。当時から、このシリーズで利益があがったとはとても思えないから、スパイ小説やミステリなどほかの分野でしっかり商売をして、こういう本も地道にだしていたのだろう。でも、先日ある方のツイッターで読んだのだけれど、文学専攻の学生さんに「早川書房の編集者だった」という話をしても、まるでぴんとこない様子だったらしい。


古本屋で2冊購入したら、なんだかはずみがついてしまって、帰りに吉祥寺パルコの地下の新刊書店に寄り、5冊購入。そのうちの1冊を早速読了。

快楽としてのミステリー (ちくま文庫)

快楽としてのミステリー (ちくま文庫)

上で触れた早川書房の話題などもたびたび出てきて、翻訳ミステリやスパイ小説の華やかなりし頃のことが書かれていて少し複雑な気持ちになる。わたしが翻訳をやっていた10年前にくらべても、業界はさらに厳しくなっていると聞く。文学も、翻訳も、これからますます読者を失っていくんだろうか。ツイッターなどを見ていると、結構、内輪的には盛り上がっていて、そう悲観することもないかな、と思ったりもするのだけれど、でも、なんというか、この「内輪」の世界はとても限定的で、狭い世界での「マニア度」を競い合っているような雰囲気もあり、わたしのように「マニア度」の低い人間からするとちょっと入りにくい世界であることは間違いないのだった。そういう意味では丸谷才一の「マニア」ではない読者に対する間口の広さは感動的ですらある。


連休前半終了にあたって自室を片付けようとして、ふと読み始めた川上弘美本にうっかり没入。先ほど読了。

これでよろしくて? (中公文庫)

これでよろしくて? (中公文庫)

印象としてはわりとさらっと書かれた本だと思うけれど、相変わらずの川上節で、川上節と波長が合うわたしは、一気に読んでしまった。最後のところでファンタジーっぽく終わるのかと思いきや、リアリズムになったのがちょっと不自然な気がしたけど、全体としては出てくるエピソードも会話もいちいちうなずける感じで、やっぱり川上弘美はうまいなあと思った。


今日は通っているテニススクールのクラス対抗の試合に出た。
絶好のテニス日和で、クラスの仲間に誘われて軽い気持ちで出たんだけど、やっぱり試合となると負けたくないと思った。
勝てばうれしいし、負ければ悔しい。
あたり前のことだけど、スポーツの世界はルールがはっきりしていて、勝ちたければ強くなるしかない、というのがわかっていて清々しい。
わたしのクラスは予選ブロック2位で、2位トーナメントの2位、という結果で、試合後に皆でビールを飲みながら、「敗因」を話し合い、これからはこんなふうにがんばろう、なんて話をして、懐かしいような気持ちになった。


あー、久しぶりにブログを書くと、書きたいことがたまっていて、あれもこれも書きたくてまとまらない。
ツイッターツイッターで、いい面もあると思うけど、やっぱりわたしはブログのほうが向いてるような気がする。
うまく両方を使い分けていければいいんだけど。