GW初日

部署を異動してまもなく一ヶ月がたとうとしている。先週、前にいた部の仲間が心のこもった歓送迎会を開いてくれた。その余韻にひたる間もなく、新しい職場の仕事は怒濤のように押し寄せている。自分の企画、上司から引き継いだ企画、上司の手伝い、と三段階くらいの仕事が全部で6、7種類あって、それらが同時進行しているのでもう、てんやわんやだ。以前の部署でもそうだったのだけれど、どうもわたしが仕事をすると、頭脳労働というよりは肉体労働っぽくなってしまう。同じ会社でも、辞書の編集者などはずいぶん様子が違うようにも思うけれど、まあ、これが自分のキャラクターなのだろう。著者からいただいた「体育会系編集者」という肩書?を、ありがたく継続使用していくことにする。


先週の読了本は1冊のみ。ほんとに読書量落ちてるなー。

高校時代のテニス部の後輩が「ど真ん中でキュンキュンきますよ〜」と絶賛していたので読み始めたのだが、まさにそのとおり。わたしはとくにユーミンが好きだったというわけではないのだけれど、それでもこの本に言及されているユーミンの曲はほとんど知っていたし、まさにそこで述べられているような青春時代を送り、いまに至っているわけで、読後の感想をひとことで言うと、「酒井順子恐るべし!」なのであった。


この本を読み終えて、久しぶりに20代の頃のことを思い出した。以前の仕事柄、高校時代のことはよく思い出していたけど、大学時代〜最初に就職した会社を退職するくらいまでのことって、あまり振り返ることがなかったみたいだ。ユーミンの歌詞どおり、彼が運転する車の助手席におさまり、苗場プリンスでスキーを楽しむ。「山手のドルフィン」も、もちろん行きましたとも。田中康夫の小説に出てくる葉山の「ラ・マレ」も、サザンの歌詞に出てくるバー「スターダスト」も、「彼が運転する車」で行くのがあたりまえだった。バブルがはじけ、それと前後してわたしのこのような生活もはじけたわけだけど、酒井順子がこの本の中で書いている、2012年の苗場プリンスで「夫と一緒に楽しそうにユーミンを聴く妻」(105ページ)になっていたとしても、全然不思議じゃない、ごくごく近いところにいたんだな、とあらためて思い出した。


その後も酒井が分析するとおり、ユーミンの歌詞にいちいち共感しつつ、30代、40代を過ごしてきた。ピンチになれば助けてくれる「ガールフレンズ」に囲まれ、「Lonely Soldiers」の一人として仕事に向かう。いまうちには車はないから、営業で地方をまわるとき以外、「助手席」に乗ることはめったにない。数年前に会社のテニス部の合宿で、男性の同僚の車の助手席に乗せてもらったときには、ちょっとドキドキしてしまったくらいだ。最近はユーミンを聴くこともめったにない。我が家のリビングで流れているのは同居人が夢中のPerfumeばかり。GW初日の今日、1日だけ30年前に戻って、誰かが運転する車で海辺の「マーロウ」へ連れてってもらいたいな、などと、不届きなことを考えてしまった。


で、現実に今日はどんなふうに過ごしたか、というと。自転車で高井戸の温泉に行き、広和書店でお買い物、夜は家でカレー、という、最近の典型的な休日の過ごし方をして、幸福感いっぱいなのだった。本日の購買商品は、アン・ビーティの短編集『この世界の女たち』(岩本正恵訳)、小谷野敦『頭の悪い日本語』、松田美佐『うわさとは何か』、テリー・ホワイト『真夜中の相棒』(小菅正夫訳)の4品。この頃読書のペースががたんと落ちているのに、本を買うペースがどんどんあがっていて、カバーのかかったままの本(未読本)が増えるばかり。上司から週末に「月曜日までに読んでおいて」と渡されたゲラ200ページ弱もあって、体育会系編集者の日常は、ユーミンの歌詞とはずいぶん遠いところで繰り広げられているようだ。