激しすぎる働き方

またしても一ヶ月以上あいてしまった。前回、予定より早く職場復帰したことを書いたけれども、「様子を見ながら少しずつ」復帰するはずだったのが、あれよあれよという間に激務の渦のただ中に投げ込まれ(自ら突入した感もあるが…)、2月の最後の日曜日まで、通常の体調の人でも悲鳴をあげるような、休日なしで連日残業、日によっては持ち帰って朝方まで仕事、という生活を送ってしまった。退院後の診察で、主治医の先生にはあきれられ、家人には叱られ、さすがにしょんぼり。でも、一応、所属する部署の仕事はなんとか一段落したので、上司からはどうぞ休みをとってくださいと言われ、今月は大胆に代休をとっている。


せっかく代休をとったのだから、本を読もう、ジムに行こう、友達にも会いたいしーなどと思うのだけれど、案外実行できない。まずは部屋を片付けなくちゃ、家事もやらなくちゃ、あ、親孝行も……などと過ごしていると、休みの1日などあっという間に過ぎてしまう。なんというか、休日の過ごし方が下手なんだな、と思う。いまの仕事は繁閑の差が激しすぎる。死ぬほど働いてまとめて代休をとるのではなくて、普通に働いて普通に休みをとる、という生活を、1年間でいいからしてみたいものだ。


でもまあとにかく、繁忙期は終わったので、少しは読了本もあるし、講演会などにも顔を出した。
野崎歓『翻訳教育』読了。

翻訳教育

翻訳教育

とても面白かった。わたしが野崎さんのファンである理由を、「見た目が好きだから」と思っている人も多いようだけれど、それはちがう。(というか、もちろん「見た目」も好みなんだけどー)翻訳学校時代も含め、いろいろな翻訳家や外国文学者の方の本を読んだり、授業や講演を聞いたりしてきた。その中で、本や文学や翻訳に対する思いというか向き合い方というか、距離の取り方というか、まあ、そういう部分で、自分がいちばんしっくりくる、共感できるのが、扱っている言語は違うのだけれど、野崎さんなのだ。翻訳家、とひとことで言っても、ほんとうにいろいろなタイプの方がいる。職人肌の「必殺仕事人」みたいな人もいるし、ミステリやSFなど好きなジャンルへの愛ゆえに翻訳家になったような「おたく」タイプの人もいる。新しいものを紹介するのが楽しくて仕方がない、って人もいるし、読者のニーズにあわせた編集者的な翻訳でびしっと決める人もいる。「名翻訳家」と言われる方々は、どのようなタイプでも皆さんそれぞれにすばらしくて、もちろん尊敬してやまないのだけれど、自分が一番共感するのが野崎さん、ということだ。では、野崎さんはどういうタイプなのか、というと、「訳読で育った田舎の文学青年がそのまま翻訳家になってしまった」タイプ。もちろん、この本に書かれている野崎さんの少年時代は、私によく似ているとはいってもはるかに高級で、重ねて読むのはおこがましいのだけれど、でも、野崎さんの本を読んだり話を聞いたりしていると、自分が文学や翻訳とかかわってきた原点というか、根の部分に、立ち戻れるような気がするのだ。


というわけで、先日、下北沢のB&Bで開かれた、野崎歓平野啓一郎対談も聞きにいった。これが、すばらしくよかった。平野啓一郎の話は、たぶん初めて聞いたと思うんだけど、とても好感がもてた。もっと若さ故の自意識過剰っぽい青年を想像してたんだけどそんなこと全然なくて、海外文学、国内文学ともに、読者としてしっかりとした素養があり、そのうえで「作家」という自分の立場から話をしていて面白かった。全体の半分くらい鷗外の話をしていたように思うけれど、二人とも鷗外に関しては「専門家」ではないわけで、だからこそおもしろかったのかもしれない。本屋さんで、一般の読者相手のトークショーだったので、自分にはちょうど合っていたのかもしれないな、と思った。


先週の日曜日、温泉入浴解禁を祝って、多摩センターにある温泉施設へ。その帰りに、多摩センターの丸善に寄ったのだけれど、その充実ぶりにびっくり。吉祥寺のジュンク堂より広い?ように思ったし、例によってガラガラだったけど海外文学の棚がそうとう充実していた。夢中になって小一時間ほど過ごし、先日吉祥寺のブックファーストで買いそびれた(レジが長蛇の列だったので断念した)坂本葵『吉祥寺の百日恋』と、ブログ仲間がいつかすすめてくれたパオロ・ジョルダーニ『素数たちの孤独』、それに、阿部公彦『詩的思考のめざめ』を購入。最後の一冊を読み始めたところだが、ものすごくおもしろい。前作の『小説的思考のススメ』もおもしろかったけれど、自分としてはこちらのほうがより、他の書き手にはない魅力にあふれていると感じた。(まだ途中なので、最後までこのままのおもしろさで突き進んでくれることを期待しつつ読み進めている。)


昨日、やっと、ずっと行きたいと思っていた世田谷文学館の「クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会」に行ってきた。たまたまイベントが企画されている日だったということもあってか大変な混雑で、展示物は人の頭の後ろからのぞきこむようにして見ることになり、あまりゆっくり堪能できなかったのだけれど、会場の一番奥に、クラフト・エヴィング商會の「本業」(?)とも言うべき、これまでの装幀作品の展示コーナーがあって、圧巻だった。この展覧会の「図録」でもある書籍『クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会』196ページに掲載されている高校の国語教科書5点も、つきあたりのいい位置に展示されていて、なんというか、光り輝いて見えた。いろんなことが頭をよぎって、泣きそうになってしまった。

星を賣る店

星を賣る店


それから、先週からテニスも再開。諸般の事情から、今まで通っていたテニススクールに通い続けるのが難しくなりそうなので、思い切って別のテニススクールの体験レッスンを受けてみた。スクールやコーチが違うとだいぶ内容も違っていて、うーん、まあ正直言えばちょっと不安はあるけれども、でもやっぱりテニスは楽しかった。しばらく通っているうちに、スクールやコーチにも慣れて、友達もできるでしょ、と楽観的に考えることにする。


では、これからお風呂に入って、ちょっと読書をしてから、寝ることにしよう。
ブログもずいぶんさぼってしまったけれど、またゆるりゆるりと復活するかねえ。