春になって

いろいろなことが少しずつ変わってゆく。
昨日は自転車で仙川沿いを三鷹から調布へ向けてゆっくりと走った。
仙川沿いは桜はもちろんだけれど菜の花がとてもきれいだ。雪のような桜の白と、菜の花の鮮やかな黄色。ところどころに紫色の花がまざる。
思わず「わあーきれい!」と声に出すと、近くを歩いていたおばあさんが嬉しそうに「そうね」と笑った。
春の風景のおかげで、みんなの気持ちがやさしくなってるみたいだ。


夕べは決心して久しぶりに自室の片付けをした。
本棚に入りきらなくなった本が無造作にタワーのように積み上げてあって、高層ビル街みたいになっている。
わたしは電車の中で本を読むことも多いので、、単行本・文庫本にかかわらず、必ず書店でカバーをかけてもらっている。
読み終えた本からカバーをはずし、本棚の隙間に押し込むかタワーの上に積み上げる。
だから、カバーのかかった本は、「これから読む本」候補、というわけだ。


ここ数か月、ほとんど本を読めなかったということもあり、カバーのかかったままの本が狭い自室のあちこちから出てきた。
現代小説あり、海外文学あり、文学史あり、と結構バラエティーに富んでいて、どれから読もうかな〜と迷っているだけで楽しい。
この「未読本」の中に時々、「未読」なのにカバーがかかっていない本がある。これは、古本屋さんで入手したもの。
先日、由良君美『みみずく古本市』を読んだのだけれど、その中で「久しく幻の名著であった」と紹介されている、ジョン・コリア『モンキー・ワイフ』。
ふーん、読んでみたいなあ、と思っていた矢先に、西荻窪の古本屋でひょっこり出くわしたのだった。
序文=西脇順三郎、跋文=安岡章太郎。うわあ、なんと豪華なことか。
しかし、擬人化した猿のイラスト(全然かわいくない)をハートで縁取りした表紙カバーとタイトルは、そのままではちょっと電車の中では広げにくそうなので、
別の本にかかっていた書店のカバーをはずし、『モンキー・ワイフ』をくるんであげた。準備OK。明日からこれを読むことにしよう。


ところで、わたしは古本屋で店主と話をすることなどめったにないのだが、このときは珍しく店主と言葉を交わした。
『モンキー・ワイフ』を買ったあと、レジの近くにアンナ・カヴァン『氷』が置いてあった。
新刊書店で『アサイラム・ピース』を買ったばかりだったので、あ、ついでに買っておこうかな、と軽い気持ちで手にとり、裏表紙をめくってびっくり。
正確な値段は忘れてしまったが、すごく高い値がつけてあった。
あわてて棚に戻したのを目ざとく見つけたご主人が、「はい、つけさせていただきました」と嬉しそうに話しかけてきたのだ。
「ああ、高いんですね…」と言うと、ご主人は『氷』よりもさらにプレミアムなカヴァンの別作品を紹介してくれ(もちろん、ぎょっとするようなお値段)、
アサイラム・ピース』は入門としては読みやすいですよ、とすすめてくれた。
なんとなく「もう買ってあるんです」とは言いにくくて、「いやあ」とか「はあ」とか空気が漏れるみたいな相槌を打ちながら退散。
あんなに情熱を傾けてもらえたら、売られている本も幸せだろう。


Twitterは、まだ全然慣れないけれど、結構おもしろいような気がする。
ブログとバッティングするかなと思ったけど、ブログは落ち着いてパソコンに向かわないと書けないから、
Twitterスマホから、ブログはパソコンから、と書き込む道具を分けてしまえば、うまく住み分けられるかな、と思っている。
ただ、いまのところは人のつぶやきを読むので精一杯。よくわからないから人気のあるページを適当にフォローしているので、
政治とか経済とか、あまりふだん関心のない領域のこともどんどん入ってきて、これが案外おもしろかったりして、ちょっと儲けたような気になる。
あと、最近年賀状だけのやりとりになっていた方の近況がわかったりするのも楽しい。


明日の朝は花見がてら散歩に行きたいと同居人が言うので、もう寝ないと。
今日の雨で桜が散っていないことを祈りつつ。